「米国の黄金時代がいま始まる」と、トランプ米大統領は今年1月の就任演説で述べました。
そして、そんなトランプ米大統領が、常々ドル安が望ましいと主張しているということは、「米国の黄金時代」と「ドル安」はセットだと考えられます。
一方で、トランプ米大統領に「絶対忠誠」の立場を貫き、元ヘッジファンドマネージャーでもあるベッセント米財務長官は、以下のようなことを語っていました。
「米国人の上位10%が株式の88%、株式市場の88%を所有している」
「次の40%が株式市場の12%を所有している」
「下位50%は負債を抱えている」
「2024年の夏には、歴史上最も多くの米国人がフードバンク(食料を必要としている人々に無償で食べ物を提供する非営利の支援組織)を利用していた」
「われわれは中小企業と消費者に焦点を絞っている」
さて、ここから読み取れるのは、「株価が上がった下がったとか二の次」「株価なんか知ったことか」というトランプ政権のスタンスです。
なぜなら、1980年代のバブル景気の日経平均株価と、2025年現在の日経平均株価とが変わらないことからも分かりますが、近年の株価は実体経済とは関係なくなってきているからです。
つまり、トランプ米大統領の言う「米国の黄金時代」とは、あくまで「実体経済」に焦点を当てたものであり、株価なんて関係ないということです。
実際、前述のように、ベッセント米財務長官が「下位50%は負債を抱えている」と言いましたが、この人たちにとっても「株価なんて関係ない」ということになります。
また、トランプ米大統領は過去に「企業家の使命は安定した雇用を生み出すことにある」とハッキリ言っており、それが実現できてこその「米国の黄金時代」だということです。
ところが、この「米国の黄金時代」の到来について、それが「可能」か「不可能」かということで、専門家の間でも見解が異なっているのが現状です。
以下に、最近のニュースを踏まえた、それぞれの見解を簡単に整理します。
【可能】
・中東を歴訪したトランプ米大統領が、ペトロダラー協定(世界中の国は石油を買うために、ドルを用意しなければならない)を復活させたから。
・サウジアラビア(石油生産世界第2位、世界第1位は米国)が、石油のドル決済を承認する見返りに米国はAI(人工知能)の技術を無制限に提供するということで、ペトロダラー協定を復活させたから。
・ペトロダラー協定の復活は、サウジアラビアに続いて、他の中東諸国も追随する流れになってきたから。
・世界の金融に深く関わっており、世界で最も金(Gold)を持っていると言われるバチカン(ローマ教皇庁のあるキリスト教の聖地)が、初めて米国人のローマ教皇(レオ14世)を立てたため、これから金融の世界も米国の時代になるから。
【不可能】
・先日のインド対パキスタンの交戦で、中国製の空対空ミサイルが米国の最新型兵器を制圧しており、米中間の貿易やハイテク分野での対立において、米国が中国に対して軍事的な脅しを出来なくなってきたから。
・クレムリン(ロシア大統領府)が、トランプ米大統領がロシアのプーチン大統領を「全く狂ってしまった」と非難したことを受け、トランプ米大統領に「感情の過負荷」がうかがえると主張した中で行われた先日の米ロ首脳の電話会談でも、ロシアとウクライナの和平には繋がらなかったから。
・大規模な減税の延長などトランプ米大統領の看板政策を盛り込んだ税制・歳出法案「大きく美しい法案」が下院で可決されたが、市場では、債務膨張が警戒されているから。
・「大きく美しい法案」について、イーロン・マスク氏(世界一の大富豪、実業家)が「財政赤字を減らすどころか拡大させ、DOGE(政府効率化省)の仕事を台無しにしている」と指摘し、トランプ米大統領との決裂が鮮明となってきたから。
さて、上記のような見解があるのが現状ですが、イーロン・マスク氏とトランプ米大統領の決裂については、「ディープステート(隠れた権力、国民が選挙で選んでもいない官僚や民間人、既得権益)をあぶり出すための囮(おとり)作戦だ」という指摘もあります。
一方で、前述のローマ教皇(レオ14世)は、多くの日本人にとって遠い存在に思えるかもしれませんが、ローマ教皇は欧米権力の中でも絶大な力を握る存在で、ローマ教皇が変われば、日本政府の中枢も変わると言われるような存在です。
したがって、前述の囮(おとり)作戦が真実で、これが成功するのであれば、「米国の黄金時代」も実現するかもしれません。
そして、その際は、トランプ米大統領が、常々ドル安が望ましいと主張しているように、「ドル安」も実現すると思います。
そのような中、「米国の黄金時代」については、前述のように、やはり「企業家の使命は安定した雇用を生み出すことにある」ということになります。
しかし、先週発表された5月のADP民間雇用者数は市場予想を下回っており、これを受け、トランプ米大統領は「パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は、今すぐ利下げを行うべきだ」「次期FRB議長を近く公表する」と述べています。
何よりも、米利下げ=ドル安がセオリーですから、今後の展開に要注目です。
ただし、実際問題として、トランプ氏は政界入り以降、少なくとも4度の暗殺未遂事件に遭遇していますし、トランプ政権の「抵抗勢力」の「力」は非常に大きいため、相場においての「決め打ち」は避けた方が賢明だと思います。
引き続き、相場はロング(買い建て)の高値掴み・ショート(売り建て)の安値掴みに気を付けて、慎重に取り組んでいきましょう。