トランプ米大統領は今年3月の「施政方針演説」の際、「インフレ(物価上昇)を打破する」「米国民の健康を増進する」「財政赤字を解消する」といったことを述べていました。
そのような中、先日は【米アマゾンに集団訴訟、重金属に汚染されたコメ販売と消費者主張】といった報道もありましたが、トランプ政権ではケネディ米厚生長官が「MAHA(米国を再び健康に)委員会」を率いており、米国の健康問題に本気で取り組むようになったため、この集団訴訟の件が今後どうなるのか要注目です。
ちなみに、「MAHA(米国を再び健康に)委員会」の報告書によると、米国の子ども達の多くが慢性疾患を抱える理由として、①不適切な食生活、②化学物質による環境汚染、③身体活動の不足と慢性的なストレス、④薬の過剰利用が挙げられています。
前述の「重金属に汚染されたコメ」については、②化学物質による環境汚染に該当すると考えられ、米アマゾンが責任を問われる可能性もあると思います。
一方で、前述のように、④薬の過剰利用も問題視されているわけですが、トランプ米大統領は米国の医薬品が割高だとして、価格を最大90%引き下げるための大統領令に署名しました。
これは、「薬の過剰利用(=薬を減らしたい)」vs「薬価引き下げ(=薬が安く手に入りやすくなる)」ということで、一見すると矛盾しているように見えますが、製薬会社と医師の癒着によって「安易に薬が処方され過ぎている」現状は改善し、高額な薬価によって本当に必要な薬が手に入らない人が多い現状も同時に改善していこうという意図があるようです。
では、この「薬価引き下げ(最大90%)」は、米経済にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか?
以下に整理してみます。
・米国の医療費はGDP(国内総生産)の約20%を占めており、薬価引き下げにより、医療費負担の軽減や、インフレ(物価上昇)圧力が軽減し、米国民の可処分所得が増える。また、インフレ圧力の軽減は、FRB(米連邦準備制度理事会)に利下げを促すこととなり、ドル安要因となる。
・薬価引き下げは、医療・製薬株にはマイナス材料となる。また、医療・製薬株はS&P500の業種別構成比で約13〜14%占めており、指数全体に強い下押し圧力がかかる可能性がある。この場合、リスクオフ(投資家がリスクを回避)で円買い圧力となる。
さて、上記のように、相場において「薬価引き下げ(最大90%)」の観点で考えると、導かれるのは「ドル安円高」です。
一方で、冒頭の「財政赤字を解消する」について、先日、格付け会社ムーディーズは米国債の格付けを最上位から格下げしましたが、米国の急増する「債務危機」に対処するにあたっては、ドル安が絶対条件と言えます。
その理由として、以下の点が挙げられます。
・ドル安になると、外国人投資家にとって、ドル建て資産(米国債等)の実質的価値は目減りするが、米国としては負担が軽くなる。
・ドル安になると、米国製品の価格競争力が上がり、輸出主導の景気浮揚が可能になる。
実際のところ、トランプ米大統領の就任以降、為替相場はドル安基調で推移しています。
トランプ米大統領は常々、ドル安が望ましいと主張してきましたが、ある意味「狙い通り」というわけです。
そのような中、「ドル安=ドルの信用力の毀損」という見方もありますが、現実的にはドル以外に基軸通貨になり得る通貨はないので、トランプ政権としては「ドル安になっても大丈夫」というスタンスなのです。
そして、それを証明するかのように、つい先日も【トランプ氏がFRB議長と会談 「利下げしないのは間違い」】と報じられたところです。
したがって、トランプ政権のスタンスに着目すると、相場はドル安目線でOKと言えるでしょう。
ただし、トランプ政権には「抵抗勢力」がいます。
その点を踏まえて、最近の気になるニュースを以下に整理します。
【米民主党主導州、トランプ政権の保健福祉省大規模改革巡り提訴】
【「独裁者に擦り寄り」 米民主党、トランプ大統領への反対演説】
【米民主党主導州、トランプ政権の教育省廃止の停止求め提訴】
【トランプ関税の無効判決、米控訴裁が一時差し止め】
【全米で「50501」デモ、トランプ政権の移民政策など非難】
【「HANDS OFF!(手を出すな!)」 全米1400カ所で60万人が行動 億万長者の権力掌握終結を トランプの国家破壊に抗議】
【米国各地で反トランプ運動 市民による初の組織的抵抗】
【科学者が全米各地でデモ トランプ政権の予算削減に抗議】
【トランプ氏、税制法案巡り共和党強硬派と会談-反対意見解消されず】
さて、まだまだありますが、いずれにせよ、トランプ政権の「抵抗勢力」の「力」は非常に大きいと言えます。
そして何よりも、先日も【トランプ政権、NSC(国家安全保障会議)大規模再編に着手「ディープステート取り除く」】という報道があったように、ディープステート(隠れた権力、国民が選挙で選んでもいない官僚や民間人、既得権益)という「大きな敵」の存在があります。
したがって、このような全体像を考えると、相場目線としては「決め打ち厳禁」で、ロング(買い建て)の高値掴み・ショート(売り建て)の安値掴みには気を付けるべきだと言えるでしょう。
引き続き、慎重に取り組んでいきましょう。