【米雇用者数、2009年以来の大幅下方修正-年次基準改定の速報値】
BLS(米労働省労働統計局)が発表してきた2024年3月までの「1年間の米雇用者数の伸び」は「従来の発表値よりはるかに低い」ものだったとのことで、8月21日に「81万8000人下方修正」されました。
下方修正幅は、リーマン・ショックの翌年の2009年以来最大となりました。
そして、このことを受け、以下のような報道もありました。
【アメリカ政府、雇用統計81.8万人の下方修正を発表!市場に大激震 投資家「今までの統計は嘘だったのか」】
さて、そもそもですが、一部の専門家は、昔から米雇用統計について「国家ぐるみの粉飾ではないか?」と指摘してきました。
例えば、以下のようなケースについて考える必要があるでしょう。
・米雇用統計は、「事業所調査」と「家計調査」という2つの調査から成り立っている。ちなみに、事業所調査は「企業・政府機関・個人事業主」を対象としており、家計調査は「世帯」を対象としている。そのような中、事業所調査が「極めて強い」内容にもかかわらず、家計調査が「極めて弱い」内容になるなど、真逆の結果となるケースもあり、一部の専門家からは「違和感を覚える」と指摘されていた。
・米国の「賃金の伸び」について、「統計上の平均労働時間を短く細工して、時給が上がったように見せているだけだ」と一部の専門家は指摘していた。
・BLS(米労働省労働統計局)による米雇用統計とは別に、米ADP社(NASDAQの上場企業で、フォーチュン誌の「世界で最も賞賛される企業」リストに14年連続でランクイン)が発表する「ADP雇用統計」があるが、両者の発表内容は「しばしば」食い違ってきた。
このように、上記を見ても分かると思いますが、BLS(米労働省労働統計局)による米雇用統計は、怪しい面があります。
では、なぜ「怪しい面があるのか?」というと、時の政権(今は民主党)が、国民に対して「状況を良く見せたい」という動機があるからだと思います。
ところが、株にせよ、為替にせよ、現実の相場は、たとえ怪しくても「米雇用統計に大きく左右される」ので、上記の報道のように、「今までの統計は嘘だったのか」という話になってくるわけです。
しかも、より酷いのが、BLS(米労働省労働統計局)の発表が、しばしば「公平ではない」ということです。
冒頭の、年次基準改定の速報値については、本来「8月21日23時」に発表される予定でしたが、実際は30分ほど遅れての発表となりました。
ところが、「少なくとも金融機関3社は発表より前に情報を入手した」ということが判明し、これが今、問題視されています。
また、【米雇用改定発表の不手際にウォール街で怒り噴出、「悪質」との声も】と報じられており、現在はそういう状況なのです。
さらに、今年の4月には、BLS(米労働省労働統計局)が発表するCPI(米消費者物価指数)に関する「データの広く公開されていない詳細」についても、同様のことがありました。
「BLS(米労働省労働統計局)のエコノミストがJPモルガン・チェースやブラックロックといったウォール街の大手金融機関からの問い合わせに何度も応じていた」ことが報じられ、「公平性」について問題視されたのです。
CPI(米消費者物価指数)は、米雇用統計に負けず劣らず「重要な経済指標」であり、現実の相場を大きく左右しますので、公平性について問題視されているBLS(米労働省労働統計局)は、組織として「大いに問題あり」と言えるでしょう。
いずれにせよ、本当に大事なのは「経済の実態」です。
実態が良いのか、悪いのか、相場が実態をきちんと反映しているのか、それこそが最も重要です。
そういう意味では、今回の「81万8000人下方修正」のニュースは、米経済にとっては深刻なはずです。
ところが、その時の米国株式市場は、FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げ(景気を刺激する策)に踏み切るだろうと捉えられ、上昇したのです。
結果、米国株式市場は未だ「歴史的高値圏」にあります。
なんだか「インチキ的」な感じがしますが、リーマン・ショックやトランプ前米大統領誕生を予言して的中させた副島隆彦氏は、新刊『米国債の巨額踏み倒しで金融統制が来る』(徳間書店)で次のようなことを述べています。
「アメリカは酷い、ぼろぼろの国になっている。大都会も、そこら中が、穴ボコだらけだ。中心地のショッピング・ストリートも安心して歩けない。きれいなお店が開いていない。客が来ないし、家賃も払えないから、高層ビルは板塀で囲っている所が多い。こういう真実は、日本では全く報道されない。アメリカは繁栄が続いている立派な国だと嘘の情報ばかりが流される。」
このように、副島氏も言っており、「嘘の情報」というのがポイントです。
また、前述のように、BLS(米労働省労働統計局)の発表も怪しいですし、世界各国の報道自由度ランキングで米国は55位、日本に至っては70位ですから、十分に注意しておかないと、いわゆる「実態」を見誤ると思います。
そして、「実態」を見誤り続けると、いつか「化けの皮が剥がれる」ということで、第二のリーマン・ショックのようなことが起こり、相場で大きな損失を被る可能性もあると思います。
そういう意味では、常に「真実・実態はどうなのか?」という視点が大事で、現実の相場が「真実・実態」と乖離しているのであれば、やはり警戒は怠らない方が賢明です。
そのような中、先日、日経新聞が、米国で株式や債券など金融資産の生み出す所得が2024年4〜6月期に年率換算で過去最高の3.7兆ドル(約540兆円)となり、日本の40倍だと報じていました。
しかし、いくらなんでも「40倍」というのは、「行き過ぎ」ではないでしょうか?
相場は、先日のような「大荒れ相場」の到来も想定し、引き続き慎重に取り組みましょう。