株式市場も為替市場も「マネーゲーム状態」が続いています。
現在の日経平均株価は歴史的高値にあり、先週の金曜日は、円が「1ドル=161円台」に下落し、37年半ぶりの歴史的安値を付けました。
一方、周知のように、日本企業の時価総額ランキングの一位はトヨタです。
そしてトヨタの創業は1933年、現在の時価総額は51兆9655億円です。
つまり創業から「91年」経って、現在の規模に至ったわけです。
そのような中、先日時価総額が世界一位になった米半導体大手のエヌビディアは創業が1993年、現在の時価総額が3兆3000億ドル(約530兆円)です。
つまり創業からわずか「31年」で、トヨタの10倍超の規模に至ったわけです。
これだけでも、エヌビディアの凄まじい成長ぶりが分かりますが、先日の以下のニュースは尋常ではありません。
【エヌビディア株が調整局面入り、過去3営業日で時価総額68兆円消失】
なんと、エヌビディアが、わずか「3日」で、トヨタの時価総額51兆9655億円を上回る時価総額68兆円を消失したのです。
はたして、このような展開が「マネーゲーム」ではないのなら、いったい何だと言うのでしょうか?
これは、間違いなく「マネーゲーム」でしょう。
同様に、今の日経平均株価(歴史的株高)も為替(歴史的円安)も、まるでマネーゲームで、歪さ(いびつさ)が際立っています。
以下に、思考の整理も兼ねて、ポイントを整理してみます。
・実質賃金が25カ月連続マイナスでも「歴史的株高」
・非正規雇用が全雇用の「4割」を占めていても「歴史的株高」
・「街角景気指数」が45・7(50以上が良い、50以下が悪い)でも「歴史的株高」
・「対外純資産」が471兆3061億円で、33年連続で世界一位でも「歴史的円安」
・IMF(国際通貨基金)が円の実質的な価値を「1ドル=90円82銭」と試算しても「歴史的円安」
まだまだありますが、今の株式市場も為替市場も、それら値動きを合理的に、論理的に説明しようと思ったら、やはり「マネーゲーム」の影響が極めて強いと言わざるを得ません。
では、今後も「とことん」マネーゲームが続くとして、現在、どのような予想があるのでしょうか?
【日本株は上振れにらみ、4万5000円予想も 専門家相次ぎ修正】
【「1ドル=200円台」に備えよ】
【日経平均とドル円レートの「AI予測」が衝撃! 年末2万8000円の暴落&1ドル230円の超円安】
【円は1ドル=120円まで上昇する可能性-マッコーリーが弱気に逆行】
上記はいずれも比較的最近のニュースですが、日経平均もドル円も、両極端な予想が出ています。
現状は見ての通り、株高・円安のトレンドですが、マネーゲームであればこそ、逆に株安・円高のトレンドに急転換してもおかしくないと思います。
ただし、株安・円高のトレンドに急転換するにあたっては、何か「きっかけ」があるはずです。
その「きっかけ」は、ありとあらゆることが考えられますが、ここでは、個人的に気になっている「地政学リスク」について、以下に整理します。
・セルビアが、かつて存在したユーゴスラビアの解体をめぐりNATO(北大西洋条約機構、西側欧米諸国)への復讐に動く可能性が高まっている。当時、NATOの狙いはユーゴスラビアの地下資源の7割強を埋蔵するコソボを乗っ取ることで、NATO軍は「1万回を超える爆撃」を行い、民間人に死者が1700人(うち子供400人以上)、重傷者が1万人出たと言われる。ちなみに、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は「セルビアを全面的に支援する」と公式に発表した。現在、セルビアのブチッチ大統領は国民に向けた演説で、戦争の拡大が近いので食料と水を備蓄するように呼びかけた。ブチッチ大統領は、第三次世界大戦は90日以内にも起こる可能性があると述べた。
・ロシアのプーチン大統領が、ウクライナへの武器供与めぐり、韓国に警告を出した。すると、その数日後、韓国リチウム電池工場(このリチウム電池は、ウクライナ軍が使うドローン用と言われている)で火災が発生して、死傷者が30人余り出た。
・ウクライナ軍が、クラスター弾頭(非常に危険なため、使用・製造・取引などを禁止する条約があり、世界100カ国以上が批准)を搭載した米国製ATACMSミサイル5発による意図的なミサイル攻撃をロシアのセヴァストポリ市に行い、民間人に多数の死傷者が出た。ロシア国防省はこの攻撃の背後には米国がいたとして、その責任を追求し、報復することを示唆した。
・ロシアはキューバやベネズエラ、そしてメキシコとの間で、軍事訓練やミサイルの搬入で合意を得た。米国にとってはキューバに限らず、地続きのメキシコにロシア軍が存在することになれば、かつてない脅威にさらされることになる。すでにキューバにはロシアの軍艦や潜水艦が派遣され、核搭載のミサイルの配備も進んでいる。
・トルコのハカン・フィダン外務大臣は記者会見で、「ウクライナ紛争は地理的に広がる可能性がある。核兵器使用の可能性が出てくるかもしれない」と警鐘を鳴らした。
・イスラエルの隣国レバノンを拠点とするヒズボラ(イスラム教シーア派組織)は、イスラエルと敵対するイランの支援を受けているが、現在、イスラエルとヒズボラの攻撃の応酬が続いており、イスラエルは南北二正面の戦い(南はハマス、北はヒズボラ)を続けているため、周辺国を巻き込んだ戦争に発展する恐れがある。
さて、「地政学リスク」についても、まだまだあるのですが、このような全体像を考えると、いかに今の「マネーゲーム相場」が「おかしい」か、よく分かるのではないかと思います。
株安・円高のトレンドに急転換することも意識した上で、相場は慎重に取り組んでいきましょう。