近年、世界的に多くの人々と無縁のところで「局所的バブル」が目立っています。
例えば日経平均株価は、現在は1980年代のバブルの頃のようになっていますが、当時は「多くの人々が今日より明日が良くなると信じていた」雰囲気がありました。
しかし、現在はそのような雰囲気は皆無で、「私には無縁」「恩恵ない」「物価上昇で大変」といった冷めた声が非常に多くなっています。
実際に、直近でも以下のようなニュースが続いています。
【「実質賃金」25か月連続の減少で過去最長 今年4月は前年同月比0.7%減】
【企業の「強欲インフレ」だった? 昨年度の物価上昇、賃上げに回らず】
【5月の「円安」関連倒産、2020年以降月間最多 東京商工リサーチ】
【家計支出、13カ月連続の減 物価高で続く節約、香典や旅行費も抑制】
【家庭・企業 光熱費増に恐々 政府補助金が5月で終了「夏場前に打ち切り厳しい」】
さて、このようなニュースがある一方、典型的な「局所的バブル」を象徴するのが以下のニュースです。
【マンション価格上昇率、東京・大阪が世界首位 4月民間調査】
4月のマンション価格上昇率において、なんと東京と大阪が世界首位になりました。
それもこれも、昨今の異常な円安を受けて「海外マネー」が流入したり、現在の株高によって潤った「日本の富裕層」の購入が進んだりしたことが要因のようです。
しかし、いくらマンション価格が上昇しようとも、前述のように「私には無縁」「恩恵ない」「物価上昇で大変」といった国民の声の方が多数でしょうから、そのうち国民の不満が爆発し、バブルは崩壊するのではないでしょうか?
一方で、米国については、日本より酷いと思われる傾向が見られます。
以下に整理します。
・ナスダック上場企業「レンディングツリー」の調査によると、米国人の約80%がファストフードを「贅沢品」とみなすようになっている。
・イリノイ大学シカゴ校都市経済開発センターの調査によると、現在、米国人の約40%が貧困状態にあるか、「ワーキングプア」に分類されていると考えられている。
・電子商取引サイトの「パブリックスクエア」と求職サイトの「レッドバルーン」の調査によると、調査対象となった中小企業8万社のほぼ半数が、バイデン政権下では今後4年間は「確実に」または「おそらく」生き残れないと答えた。
・(上記に続き)米国の中小企業の賃借人のうち、なんと43%が先月家賃を全額支払えなかったことが判明した。
さて、このような状況の中、先週ブルームバーグが報じたのが以下のニュースです。
【米国のミドルクラス、3分の2が経済的に苦しい-民間調査】
米国でミドルクラス(中間所得者層)とされる市民のほぼ3分の2が、経済的苦境に直面しているとのことです。
しかも、これは貧困層ではなく中間層の話ですから、事態はかなり深刻だと思います。
ただし、日本と同様、先週は以下のようなニュースも報じられました。
【S&P500種今年25回目の記録更新、ドルは一時156円48銭】
S&P500種株価指数が「今年25回目の最高値更新」となったニュースです。
前述のように、中間層の3分の2が経済的に苦しくても、「そんなの関係ない」とばかりの株高が続いています。
そして、そんな米国株の中でも、ひと際目立っているのが米半導体大手の「エヌビディア」です。
AI(人工知能)が「次の産業革命だ!」と言われる中での大躍進となっています。
【米半導体エヌビディア、時価総額でアップル抜き世界2位に AI投資で躍進】
6月5日、エヌビディアは時価総額が3兆ドル(約470兆円)を超えました。
米アップルを抜き、米マイクロソフトに次ぐ世界2位の上場企業となったのです。
しかし、AI(人工知能)が次の産業革命だとして、いくら「生産性と利益が上昇し続ける!」と言ったところで、これによって失業が増加し、経済的な不安定さを抱える人が増えていくのであれば、どれだけの意味があるのでしょうか?
実際、経済学者でノーベル賞受賞者のポール・ローマー教授は以下のような警告を発しています。
・現在、AIの今後の軌道についてあまりにも高い信頼が寄せられている。人々がこのような予測をするとき、非常に深刻な間違いを犯す危険性がある。
・2年後に人々は今を振り返り「本当にバブルだった。われわれは将来の展開を過大評価していた」と言うだろう。
結局のところ、多くの人々が経済的に苦しくなっていく中で、一部の人だけが「局所的バブル」で潤ったとしても、このような状況は「持続不可能」でしょう。
それこそ、ポール・ローマー教授の言う通り、2年後に人々は今を振り返り「本当にバブルだった」と言うのではないでしょうか?
つまり、株にせよ、為替にせよ、上がり過ぎたものは下がるのが道理であり、現在の株高やドル高円安に警鐘を鳴らす声が多数あるのは当然のことなのです。
相場は、引き続き慎重に取り組んでいきましょう。