【日銀がマイナス金利を解除、17年ぶり利上げ 異次元緩和から大転換】
日本銀行が先週19日(火)の金融政策決定会合で、11年にわたる大規模な金融緩和策(マネーのジャブジャブ)を終えると決めました。
そして、マイナス金利を解除して17年ぶりの利上げに踏み切りました。
このことは、私たちにどのような影響をもたらすのでしょうか?
一般的には、以下のようなことが言われています。
・普通預金や定期預金の金利が引き上げられる
・住宅ローンの金利が上昇する
・企業の借り入れ金利が上昇する
一方で、外国為替市場では、政策転換後は円高ドル安が進んでいくというのが「教科書的」な見方です。
また、株価も下落するというのが「教科書的」な見方です。
ところが、以下のニュースにもあるように、現実の相場反応は「逆」となりました。
【日銀“利上げ”もまさかの円安加速・・・早くも崩れたインフレ抑制シナリオとその後】
【マイナス金利解除で円安・株高 「当面緩和的」で教科書と反対に】
【円安持続・日経平均は4万突破・・・予想外の市場反応】
先週、1ドル=149.06円でスタートしたドル円は1ドル=151.41円で終了し、38960円でスタートした日経平均株価は40888円で終了しました。
つまり、2円35銭も円安に進み、1928円も株高になったということです。
しかし、このような「教科書的でない」相場が、はたして「まとも」だと言えるのでしょうか?
少なくとも、以下のようなニュースについて、よく考えてみる必要があると思います。
【ビッグマック価格で見れば1ドル81円、為替相場はとんでもない円安】
【経団連会長「ファンダメンタルズから見れば、もっと円高であってもおかしくない」】
【「経済的ゆとりない」6割で最高 物価高、7割が懸念―内閣府調査】
【借り入れ負担増、企業圧迫 中小苦境、息切れ倒産も マイナス金利解除】
【株価史上最高値・・・景気回復9割が「実感していない」 MBCアンケート調査から】
【日経平均株価は「ババ抜き」の段階へ・・・高値掴みするハメになるのは誰だ?】
上記のようなニュースからも分かるように、昨今の「円安」も「株高」も、経済の実態を反映したものではなく、マネーゲームの結果と言えるでしょう。
そのような中、昨今の株高の「起爆剤」になっていると言われているのが生成AI(人工知能が与えられたデータやパターンから新たなデータを生成する能力を持つ技術)ですが、パナソニックの執行役員の松岡氏は、「マネーゲームになっている」「生成AIをうまく活用できている企業はほんの一部だ」と述べています。
また、以前、SEC(米証券取引委員会)の委員長は、企業が投資家への説明でAIに言及する場合、具体的に何を意味しているかを明確にすべきだと指摘し、AIの能力や活用を誇張することで投資家を欺く「AIウォッシング」と呼ばれる行為は避ける必要があるとの考えを示唆しています。
このようなことを踏まえれば、いくら「AIの時代だ!」と言っても、AIへの過剰な期待は慎んだ方がよいと思います。
そして、米国の著名投資家で、「投資の神様」と称されるウォーレン・バフェット氏も、昨今の株式相場を「カジノ的だ」と指摘しているように、いくら現実の相場が株高であったとしても、それを「まとも」だと考えない方がよいと思います。
ただし、現実は、そんな「カジノ的」な株高と円安がリンクしています。
東京証券取引所が公表している「投資主体別売買動向」をチェックしていくと分かるように、昨今の株価の急騰は海外投資家が主導していますが、そんな海外投資家が、為替リスクのヘッジ(回避)目的で大規模な円売りを出しているのです。
報道によると、「株価が10%上昇すると、8.3兆円ほどの円売りが発生する計算になる」とのことです。
結果として、経済の実態を反映しない「株高」と「円安」になっているということなのです。
しかし、いつまでこのようなことが続くのでしょうか?
先月、日本経済新聞で以下のような報道がありました。
【神田財務官、円安進行「かなり急速」「投機的動きも」】
財務省の神田財務官が、外国為替市場で1ドル=150円台まで円安が進行したことについて「最近の為替の動きはかなり急速だ。災害対応と一緒で24時間365日対応できるよう準備している」「明らかに投機的な動きもあり、いかがなものかと思う」と語りました。
また、為替介入(円買い介入)についても「必要があれば適切に対応する」と述べました。
そのような中、現在のドル円は34年ぶり高値となる152円に迫る動きとなっています。
そして本日も神田財務官は上記と同様のコメントを出しており、近いうちに為替介入が行われても、全く不思議ではありません。
相場については、引き続き慎重に取り組んでいきましょう。