日米ともに株高が加速しています。
しかし、この株高は「経済の実態を無視したマネーゲームの結果」だと思います。
ちなみに日経平均株価の上昇が加速しているのは、【東京株、追い風は米の「株高」】と報じられているように、米国の株高の影響を受けているのは間違いありません。
したがって、まずは米国の現状について考えてみたいと思います。
米国経済は、米国株が史上最高値の更新が続くなど一見好調で、そのような好調さを伝えるニュースもいくつかあり、例えば先週は以下のようなニュースが続きました。
【米消費者物価指数、1月3.1%上昇 市場予想上回る】
【米国の失業保険、申請21万2000件 市場予想下回る】
【NY連銀製造業景況指数、依然マイナス圏も2020年以来の大幅上昇】
【米NAHB住宅市場指数、6カ月ぶり高水準-金利低下の好影響続く】
さて、ここで大事なポイントは、米消費者物価指数を発表しているのは米労働省、米国の失業保険を発表しているのも米労働省、NY連銀製造業景況指数を発表しているのはNY連銀(全米12の地区連銀のひとつ)、米NAHB住宅市場指数を発表しているのはNAHB(米住宅建設業協会)ということです。
要するに、米労働省は政府機関、NY連銀は全米12の地区連銀のひとつで政府と協力関係にあり、NAHB(米住宅建設業協会)は業界の利益を代表することに焦点を当て米国の住宅政策の立案に関与している・・・といったように、いずれも米政府と無関係でないということです。
つまり、米国経済の好調さを伝えるニュースというのは、政府絡み(からみ)のものばかりだということです。
一方で、他のニュースに注目すると、米国経済の「不調さ」が目立ちます。
例えば、以下のようなニュースがあります。
【米でホームレス急増、過去最大の伸び=WSJ調査】
【米人員削減、1月8万人超 リストラ・AI導入で高水準】
【米企業の決算説明会、人員削減への言及頻度がコロナ禍以来の高レベル】
特に最近、米国で「人員削減」に関するニュースが山ほどあるのですが、どういうわけか、米労働省が発表する米雇用統計では【米1月雇用35.3万人増と予想大幅に上回る】といった形で、米国の労働市場は堅調だと伝えられます。
しかし、米国で山ほどある「人員削減」に関するニュースにきちんと向き合いますと、「嘘をついているのは米政府だ」と言えそうです。
実際、一部の専門家は「バイデン政権は、劣勢な選挙になんとしてでも勝つために、実態を誤魔化して経済の良さをアピールしている」と言っています。
たしかに、「ホームレスが急増し、人員削減のオンパレードだが、経済は好調である」と言っても、それは不自然な話です。
したがって、政府絡み(からみ)の米国経済の好調さを伝えるニュースと、その他のニュースを比較すれば、上記からも「その他のニュース」の方が、信憑性が高いと考えられます。
次に日本ですが、米国経済と同様、「不調さ」が目立ちます。
例えば、以下のようなニュースがあります。
【日本、予想外の景気後退入り GDPが2期連続マイナス】
【3人に1人は「非正規雇用」…「日本だけ」賃金が上がらない根本原因】
【貧困急増…「平均所得200~300万円未満が最多」「主要先進7ヵ国でも最下位」日本人のキツすぎるリアル】
上記のニュースを見れば、日本経済も明らかに「不調」ですが、先週末は日経平均株価が史上最高値まで「50円」ほどに迫るなど、経済の実態を無視したマネーゲームのような展開となっています。
いずれにせよ、米国であれ、日本であれ、大事なのは「国民の生活実感」で、「国民の生活実感」と株価がかけ離れているのであれば、それは要注意です。
そして、相場における「要注意」といえば、大幅な価格修正です。
日経平均株価は、過去には7603円(2003年4月28日)という安値がありましたし、ドル円は75.32円(2011年10月31日)という高値がありました。
「上がり過ぎたものは下がる」「下がり過ぎたものは上がる」といった相場の性質を考えますと、さらなる株高や、さらなる円安を追求することに対して慎重であるべきだと思います。
そのような中、世間では「AI(人工知能)の恩恵が広がり、生産性と利益が上昇し続ける」といった考え方があり、AI人気が今の株高を主導しているという見方もあります。
しかし、人々が「それは誇張だ」と認識すれば、相場はどうなるのでしょうか?
実際、先日、SEC(米証券取引委員会)の委員長は、企業が投資家への説明でAIに言及する場合、具体的に何を意味しているかを明確にすべきだと指摘し、AIの能力や活用を誇張することで投資家を欺く「AIウォッシング」と呼ばれる行為は避ける必要があるとの考えを示唆しました。
株価にせよ、為替にせよ、現状の値動きを正当化するような話は色々とありますが、前述のような全体像を踏まえ、引き続き相場は慎重に取り組んでいきましょう。