昨今は、日米ともに景気と株価がリンクせず、株価ばかりが上昇しています。
ここで、まずは直近の日本に関するニュースを見てみます。
【23年の実質賃金2.5%減、2年連続減 90年以降で最低水準】
【街角景気1月は1.6ポイント低下 物価高による買い控えや震災影響で】
【企業倒産22カ月連続で前年同月を上回り、「突然死」の倒産が増加】
【日経平均終値743円高 3万6863円 終値でバブル後最高値更新】
【日経平均株価3万7000円台に 34年ぶりの水準 米株価上昇受け】
このように、実質賃金が2年連続で減り、街角景気も悪化し、企業倒産も増加する中で、株価ばかりが上昇しています。
次に米国ですが、日本とはまた様子が違って、専門家からも疑問の声がたくさん挙がっている実態があるのですが、ひとまず直近のニュースを見てみます。
【米ISM製造業景気指数、1月は49.1 15カ月連続で50割れ】
【米ISM非製造業総合指数、1月は53.4に上昇 雇用と受注好調】
【米家計債務、第4四半期は17.5兆ドルに増加 延滞率上昇=NY連銀】
【米ADP民間雇用、1月は10.7万人増 予想大幅に下回る】
【米1月雇用35.3万人増と予想大幅に上回る、賃金の伸び約2年ぶりの高さ】
【NYダウ平均株価 史上最高値を更新】
【米S&P500、初の大台5000を突破 過去最高値を更新】
まず、ニュースから言えることは、米国の製造業は不調で、非製造業は好調だということです。
そして、自動車ローン、クレジットカード、住宅ローン、学生ローンといった「家計債務」の延滞率が上昇しており、家計の苦境が増大している様子が分かります。
次に、米国の「雇用」についてですが、米ADP社(NASDAQの上場企業で、フォーチュン誌の「世界で最も賞賛される企業」リストに14年連続でランクイン)が、米雇用統計(政府調査)の2日前に発表した「米1月ADP雇用統計」において、雇用者数の増加が「市場予想を大幅に下回る」結果となりました。
ところが、その2日後に発表された「米1月雇用統計(政府調査)」では、雇用者数の増加が「市場予想を大幅に上回る」結果となったのです。
要するに、「米1月ADP雇用統計」と「米1月雇用統計(政府調査)」で、市場予想に対して真逆の結果になったということです。
ちなみに、米国の「賃金の伸び」についても同様で、米1月ADP雇用統計では「鈍化」となる一方で、米1月雇用統計(政府調査)では「約2年ぶりの高さ」となり、やはり真逆の結果でした。
いったい、この違いは、どういうことなのでしょうか?
いくつかポイントになると思われることを以下に整理します。
・ADP雇用統計は、約50万社の顧客を対象に毎月雇用者数の動向を調査した指標である
・米雇用統計(政府調査)は、「事業所調査」と「家計調査」という2つの調査から成り立っている
・米1月雇用統計は、事業所調査(約12万2千の企業・政府機関、約66万6千の個人事業主を対象)が極めて強い内容で、家計調査(約6万世帯を対象)が極めて弱い内容だった
・事業所調査と家計調査が真逆の結果(極めて強い、極めて弱い)となったことで、専門家からは「なぜ真逆になっているのか?」「違和感を覚える」等、疑問の声がたくさん挙がっている
・一部の専門家は、昔から米雇用統計(政府調査)について、「国家ぐるみの粉飾ではないか?」と指摘している
・米国の「賃金の伸び」について、米1月雇用統計(政府調査)では「約2年ぶりの高さ」となったが、一方で「統計上の平均労働時間を短く細工して、時給が上がったように見せているだけだ」と指摘している専門家もいる
さて、上記のポイントからも、個人的にはADP雇用統計の方が実態に近く、米雇用統計(政府調査)については「眉唾物(まゆつばもの)」だと思っています。
しかし、どれだけ「眉唾物(まゆつばもの)」であったとしても、以下のニュースのように、現実の相場は米雇用統計(政府調査)に大きく左右されるのです。
【株は最高値、力強い雇用統計で景気楽観 一時148円58銭】
【米1月雇用統計、ポジティブサプライズでドル反発】
問題は、「化けの皮が剥がれる」という言葉があるように、「株価にせよ、為替にせよ、実態を無視した値動きは、いつか大幅修正されるのではないか?」ということです。
そのような中、先日、ウォーレン・バフェット氏、ジョージ・ソロス氏と並んで「世界三大投資家」と称されるジム・ロジャーズ氏は、「米国が衰退するのは時間の問題、米ドル離れは加速する」と述べました。
現時点では、株高・ドル高のトレンドですが、いつトレンドがひっくり返ってもおかしくないと思いますので、引き続き相場は慎重に取り組んでいきましょう。