インフレ・・・物価が継続的に上昇する状態で、通貨(円)の価値が下がる
デフレ・・・・物価が継続的に下落する状態で、通貨(円)の価値が上がる
上記は「インフレ」と「デフレ」の説明ですが、これらは経済現象の基礎用語でもあります。
そのような中、現状は人々の生活実感としての物価高があり、そして「円」は3年連続で最弱通貨になろうとしていますので、現状は間違いなく「インフレ」と言えるでしょう。
事実、先日公表された日銀の展望レポートでも、ハッキリと「インフレ」が示されていました。
ところが、先週末11月10日(金)に報じられたのが以下のニュースです。
【デフレ完全脱却へ13.2兆円の補正予算閣議決定-財政健全化課題に】
さすがに、これには「政府の時代認識に危機感を覚える」という声が後を絶たないようです。
今更「デフレ脱却」などと言っているからです。
また先月の読売新聞のニュースになりますが、以下のような、政府への指摘もありました。
・「デフレではないが、デフレ脱却ではない」・・・珍妙な霞が関文学
・「我が国経済は緩やかに減速しながらも、引き続き拡大している」・・・「減速」と「拡大」が並び、景気は良いのか悪いのか。読む人を煙に巻くような霞が関文学
・8月の消費者物価上昇率は前年同月比3.1%で、1年間にわたって3%以上の物価高が続いている。もはやインフレ時代だ。「何でもかんでも値上げ」の今、なぜデフレ脱却ではないのか?
・ある官庁エコノミストは「最近、大御所と称される経済学者からも『これがデフレ脱却でなくて何なのか』と批判を受ける」と明かす。消費者の実感から 乖離(かいり)していることも重々承知だという。
さて、私達国民は、これをどう解釈したらよいのでしょうか?
衆議院議員で、元新潟県知事の米山氏は、以下のように述べていました。
【かつて「官僚は一流、経済は二流、政治は三流」と言われた日本は、絶対的権力を握った三流の政治に忖度(そんたく)して、官僚機構も三流になり、その被害で経済もまた三流に落ちようとしている様に見えます。】
個人的には、米山氏の発言に同意します。
なぜなら、政治と官僚が三流でなければ、通貨の「円」も3年連続で最弱通貨になるはずがない、と思うからです。
いずれにせよ、円安が止まらない中で、先週報じられたのが以下のニュースです。
【「隠れ円安」止まらず、対欧州やアジア 円キャリー拡大】
これは要するに、ドルだけでなく、ありとあらゆる通貨に対して、円安が止まらなくなっているということです。
ただし、このような極端な円安が「本当に妥当なのか?」といえば、そうではないと思います。
実際、11月1日(水)に財務省の神田財務官は、為替介入を含めた準備状況を問われ「スタンバイだ。マーケットの状況を、緊張感を持って見ているなかで判断する」と語っており、いつ為替介入が行われてもおかしくありません。
また神田財務官は、円安が進む理由については「一番大きいのは投機だと思う。総合的に勘案するとファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)と合っていない動きがみられる」との認識を示しており、個人的にも「ファンダメンタルズと合っていない」という見解には同意できます。
そんな「ファンダメンタルズ」を考えた時に、先週は米国についての2つの無視できないニュースが報じられました。
【米国の年間利払い額、推定1兆ドル突破-国債への売り圧力強まる恐れ】
【米信用格付け、見通し「ネガティブ」に修正-ムーディーズ】
まず、米国債の年間利払い額ですが、1兆ドル(151兆5130億円)を超えているようです。
そして、繰り返しになりますが、これは「利払い額」で、利息の額だということです。
さらに、過去1年7カ月で「倍増」しているそうです。
どう考えても、これは国家として「不健全」でしょう。
だからこそ、米大手格付け会社ムーディーズも、米国の信用格付け見通しを従来の「安定的」から「ネガティブ」に修正したのです。
そして、次に欧州です。
【ユーロ圏の景気後退入り、「ほぼ確実」-ドラギ前ECB総裁】
上記は、イタリアの元首相で、ECB(欧州中央銀行)の前総裁でもあるドラギ氏が、ユーロ圏について「年内のリセッション(景気後退)入りはほぼ確実だ」と語ったニュースです。
このように、少しでもファンダメンタルズに注目すれば、現状の円安は、やはり「行き過ぎ」だと判断できます。
今後も、為替介入の可能性もしっかり意識しつつ、引き続き慎重に取り組みましょう。