先週は、日銀の金融政策決定会合が開かれました。
私は、日銀の植田総裁の記者会見をリアルタイムで観たのですが、一言で言うと「わざとピントをぼかしたような表現で、煙に巻いているような印象」を受けました。
また同様の感想の声は、他の市場関係者からも出ていました。
結局のところ、市場では緩和スタンス(マネーのジャブジャブ)に変化はないとの見方となって、さらなる円安が進み、為替相場は「1ドル=151円台後半」と年初来の安値を更新しました。
そのような中で印象的だったのが、記者たちから以下のような声が上がったことでした。
・総裁は国賊と呼ばれても仕方ないのではないか?
・日銀の政策運営は、誤っていないのか?
・全く納得できない。
実際に、東京新聞が報じたところでは、情報公開請求で日銀に対する「現行の金融政策への批判」の声は100件を超えており、しかもそれは昨年6月からの1年間で初めてのことだそうで、上記のような記者の声こそ「まとも」だと個人的には思います。
何せ円安が止まらないわけですが、そんな日本の現状について、ここで整理してみます。
・「経済の体温計」とも言われるCPI(消費者物価指数)は、2023年9月分が1年前に比べて3.0%上昇で、25ヶ月連続の上昇となっており、国内の物価上昇が止まらなくなっている。
・多くの国民がエネルギーや食品価格の上昇を実感しているのに、日銀が、それらを除いて「物価は上昇していない」と言い、それらを無視して金融政策を遂行することが正しいとは思えない。
・「CPI(消費者物価指数)は日銀の目標である2%を大きく上回る状態が続いている。日銀がなぜ大規模な金融緩和にこだわるのかは疑問だ」と、ブルームバーグでも報じられた。
・日銀の大規模な金融緩和が、円安を助長している。
さて、このような現状で、為替市場で円安が止まらなくなってきた時に「消火役」で登場するのが財務省です。
【円安進行 神田財務官、為替介入含め「スタンバイ」】
財務省の神田財務官は先週1日(水)の朝、外国為替市場で進む円安について「短い間に数円動いている。一方的で急激な動きを懸念していて、過度な変動にはあらゆる手段を排除せず適切な行動をとる」と述べました。
そして、為替介入を含めた準備状況を問われ、「スタンバイだ。マーケットの状況を、緊張感を持って見ているなかで判断する」と語りました。
また神田財務官は、円安が進む理由については「一番大きいのは投機だと思う。総合的に勘案するとファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)と合っていない動きがみられる」との認識を示しました。
しかし、「このまま行けば」ですが、日本の「円」が3年連続で最弱通貨になろうとしている中で、個人的には、これは「投機」以上に「マッチポンプ」だと感じます。
というのも、日銀が金融緩和で円安に誘導し、財務省が口先介入・為替介入で円高に修正するという流れが、近年の「お決まりのパターン」になっているからです。
これは、日本という「国家」で考えた時に、自ら火をつけて、自ら消火するということですから、やはり「マッチポンプ」ではないでしょうか。
しかも、このような「マッチポンプ」で、迷惑を被っているのは「日本国民」です。
実際に、民間のシンクタンク(研究機関)は、円相場が1ドル=150円で推移した場合、今年度の家計の負担額は昨年度と比べて平均で10万2000円あまり増えると試算しており、このことを先週はNHKが報じていました。
その上、働く人1人当たりの8月実質賃金は去年の同じ月と比べて2.5%減少し、17か月連続でマイナスとなっていますし、1995年から行われている国民生活基礎調査では、国民の年収中央値は100万円も下がっていることが分かっています。
ですので、いったい「誰のための金融緩和なのか?」という疑問が出てくるのです。
そして、日経新聞でも「金融緩和は弱者を救わない」と報じられたように、マネーのジャブジャブが多くの日本国民に流れていないのは明白です。
結局のところ、このような全体像を考えた時に、唯一説明が付くとすれば、以下が「答え」になると思います。
・日本が米国に貢いでいる。
・米国の巨額の財政赤字の穴埋めに、日本の資金を使っている。(米国債を買う)
ロイター通信が報じたところでは、日本の米国債保有額は1兆1060億ドル(約165兆2308億円)となっており、マネーのジャブジャブは、その多くが、日本から米国に流れていると考えられます。
(ちなみに、2022年度の日本の税収は71兆円)
「日本は米国の属国」と評されてもおかしくない現実があります。
したがって、このような全体像を考えれば、今後もどれだけ金融緩和しようとも、その資金の多くは日本から米国に流れ、さらなる円安を招くのではないでしょうか。
よって、今後の相場観も「基本は円売り」で、「財務省がけん制し始めたら円買い」というスタンスが正解だと思いますが、現状は地政学的リスク等、不安定な世界情勢ですから、相場の乱高下も想定しつつ、引き続き慎重に取り組んでいきましょう。