【為替介入巡り市場の疑心暗鬼続く、政府当局者が相次ぎ明言避ける】
先週3日(火)の夜、円が対ドルで急反発しました。
円が昨年10月以来の安値となる「1ドル=150円16銭」まで下落したタイミングで急反発し、そこからわずか「数秒間で」約2%上昇し、「1ドル=147円43銭」となりました。
そのため、市場では「日本の政府当局が円買い介入を実施したのではないか?」との観測が流れました。
ちなみに、前述の「1ドル=147円43銭」は先月の9月5日(火)に付けた値でもあり、そこから「約1か月」かけて「1ドル=150円16銭」になったわけですが、それがわずか「数秒間で」元に戻ったということなのです。
しかし「1ドル=147円43銭」まで急反発した後は、一転して急反落し、「1ドル=149円32銭」まで値を戻しました。
まさに「乱高下」の値動きでした。
ところで、相場格言には「損切りは早く、利は伸ばせ」というものがあります。
ただし、このような乱高下する相場でこの格言(損切りは早く、利は伸ばせ)を実行すると、高い確率で「損切り」がヒットするので注意が必要です。
そして「損切り」のヒットが連続すれば、今度は「損切り貧乏」となりかねないので、やはり注意が必要です。
実際に、コンピューターを駆使するアルゴリズムトレーダーの中には、過去データを検証した結果として「この相場格言は嘘だ」と断言する人もいるので、なおさら注意が必要だと思います。
さて、そのような中、先週は以下のようなニュースも報じられました。
【ヘッジファンドは気付いた、AIで市場を打ち負かすのは本当に難しい】
近年、相場の世界ではAI(人工知能)が台頭しています。
そして書籍『人工知能が金融を支配する日』(東洋経済新報社)では、「100万分の1秒で売買を執行する」「過去の相場の動きだけではなく、取引可能なあらゆるデータのパターンを解析する」という、そんな近年のAIの実力について言及されています。
しかし、そんなAIであっても、現実の相場では「AI(人工知能) 対 AI(人工知能)」となるわけで、上記ニュースにもあるように「AIで市場を打ち負かすのは本当に難しい」ということになっているようです。
一方、過去にNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』という番組で、データサイエンティスト・河本薫さんの仕事が紹介されていましたが、河本さんは「(AIによって)なぜその結論が導き出されたのかを人間が理解するのが難しい」と語っています。
なぜならAIは、時に人間が何年もかかるような分析を15分ほどで行うこともできるからです。
したがって、相場の世界においても、AIの最大のハードルの一つが「説明可能性」にあるようです。
儲かったとしても、損したとしても、肝心の「なぜ?」が分からないというわけです。
では、このような、ある意味「カオス」になっている現在の相場で、個人の投資家はどう対処したらよいのでしょうか?
参考になりそうな、専門家のいくつかの意見を以下に整理します。
・金融情報学が専門で東京大学大学院の和泉教授は「AIは短期的な取引には強いが、金融危機や災害、テロなどの突発的な事態には弱い」と言い、私達人間の投資家は「何かおかしいぞ」「そろそろ何かが起こるのではないか」といったような人間的な感覚こそを大事にすべきだと言っている。
・野村総合研究所の大崎貞和氏は「人間は長期運用に、AIは短期運用にと、役割をすみ分けるようになるだろう」と言っている。
・東京大学の某投資クラブの代表は「個人投資家はあくまで中長期的な視点で投資すべきだ」と言っている。
つまりのところ、私達個人の投資家は、「何かおかしいぞ」「そろそろ何かが起こるのではないか」といったような人間的な感覚こそを大事にし、中長期的な視点で投資すべきだと言えるでしょう。
そして、これを踏まえた上で、個人的に「重要だ」と思うポイントを以下に整理します。
・「損切り貧乏」にならないように、「心理負け」しないように、ポジション量や値幅に注意を払う。
・ロング(買い建て)の高値掴み・ショート(売り建て)の安値掴みに注意する。
・上昇トレンドの「押し目買い」や、下落トレンドの「戻り売り」を狙う。
結局のところ、「切った張った」の短期売買で勝負するというよりも、中長期的な視点で、様々なことに気を付けながら取り組むべきだと言えるでしょう。
また、前述の「何かおかしいぞ」「そろそろ何かが起こるのではないか」といったような人間的な感覚で言うならば、個人的には、今、世界中で「景気悪化」を示唆する情報が山ほどあることが気がかりです。
実際に、先週も【ブラックマンデーの1987年、現在と不吉な類似】といった報道があり、1987年と同様に、景気後退の示唆が少しでも表れれば、株式への壊滅的な打撃になることは間違いないという、専門家の意見があります。
要するに、今後の相場は「金融危機」を想定して取り組む必要があると思うのです。
引き続き、慎重に取り組みましょう。