先週は、毎日のように「米政府閉鎖」に関するニュースが報じられ、毎日のように「為替介入」をほのめかす鈴木財務相の発言が報じられました。
ところが、政府閉鎖が懸念された米国の「ドル」は上昇し続け、為替介入が懸念された日本の「円」は下落し続けました。
つまり、為替相場の値動きが、ニュースから連想される値動きとは「真逆」になったということなのです。
ちなみに、土壇場で政府閉鎖は回避されましたが、もしも米政府が閉鎖された場合、何が起きるのかというと、過去のパターン(4回あった)から、以下のようなことが言われています。
・軍や警察が無給になる
・航空便が遅延する
・数十万人の連邦政府職員が自宅待機
・食品医薬品局が閉鎖
・博物館が閉鎖
・ゴミの山が道路に積み上がっていく
・雇用統計・GDP(国内総生産)などの発表が遅れる
・様々な計画途上にあるプロジェクトが遅延する
・経済への悪影響がみられる
要するに、政府が日々の経費を払えないよ、ということで不急のサービスを停止することになるのです。
さらに、政府が閉鎖されることによって、仕事が無くなる人達(給料が止まる、アルバイトで食べる)がいますから、労働市場においては「失業保険申請者数」が増えることになります。
このように、ある意味「踏んだり蹴ったり」なのが政府閉鎖で、今回、米格付け大手ムーディーズは、政府閉鎖が現実になった場合、米国債の格付けにとって「マイナスになる」との見解を示していました。
しかし、現実の相場は「ドル一強」と言っても過言ではなく、直近の3カ月でみても、最も買われている通貨は「ドル」となっています。
日本を含め、他の国々においては、政府閉鎖の話すら出ていなかったにもかかわらずです。
では、「ニュースが嘘を報じているのか?」というと、それは違うでしょうから、現実の相場の方が「楽観的過ぎる」と認識することができます。
つまり相場は、いつかどこかで「大幅修正」があると思っておいた方がいいでしょう。
実際に、【ドルはピークが視野に、米政府機関閉鎖が長期化なら-ソシエテG】という報道もありましたが、米政府機関の閉鎖が1~2週間余り続く場合、ドルはピークが視野に入る可能性があると、フランス金融大手ソシエテ・ジュネラルの為替ストラテジストは指摘していました。
今回は土壇場で閉鎖が回避されましたが、不安定な米国の「ドル」が、いつ「ドル安」に転じるか、要注目です。
一方で、円安の弊害も目立ってきました。
【止まらぬ円安1ドル=150円に迫る 海外生活を円で換算すると…各支局員が取材】
上記の報道によると、止まらない円安によって、現在は以下のような状況になっています。
・日本からの海外旅行の数は、コロナ前まで戻っておらず、コロナ前の6割にとどまっている。
・ニューヨークの日本食スーパー「KATAGIRI」では、卵が1280円、カットされた長芋が730円、えのきだけが670円、豆腐が1パック450円。
・ニューヨークで、家族4人でラーメンを食べに行った場合、ラーメン4杯、餃子3つ、ビール2杯を飲んだ場合、2万円を超えてしまう。
・ロンドンでは、ビール1杯1260円。
・タイは安く遊べる旅行先として日本人に人気だったが、バンコクの繁華街でも、マッサージ店でも日本人観光客の姿は、ほとんど見られなくなっている。
・海外の方が稼げるということで、働き先を海外に求める日本の若者達が増えている。
さて、上記の報道では「(円安が)さすがにここまでくるとは思ってなかった」という、米国在住者のコメントも紹介されていましたが、今、日本の「円」の実力は53年ぶりの低水準で、為替相場が固定レートで「1ドル=360円」だった時代よりも円の実力が下がっています。
したがって、これは「日本政府の失敗」と言っても過言ではないと思います。
もちろん、現実の相場は、それに加え、マネーゲーム(投機)で決まっている側面もあるでしょうが、日本政府の責任は極めて大きいと思います。
というのも、家計の金融資産が過去最大の2115兆円、対外純資産も過去最大の418兆6285億円で32年連続の世界一、経常収支(海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す)も過去最大の2兆7717億円の「単月黒字」である日本の「円」が、「なぜこんなにも安いのか?」という話になるからです。
いずれにせよ、この異常な円安は、人々の「暮らし」にも影響するレベルになってきているということです。
ただし、どれだけ「おかしな」相場が続こうとも、投資家としては稼ぐ必要があります。
そして、例えば「1ドル=200円」や「1ドル=50円」のどちらの展開になっても稼げる戦略とは何かと考えますと、相場の「トレンド」を重視することが必須だと言えます。
一方で、相場が急変することも考えて、ロング(買い建て)の高値掴み・ショート(売り建て)の安値掴みは避けたいですから、上昇トレンドの「押し目買い」や、下落トレンドの「戻り売り」を狙うスタンスが重要です。
このように、相場の「波」に上手く乗るよう努める必要があるのは確かですが、同時にリスク管理も必須です。
このようなことを踏まえ、引き続き慎重に取り組んでいきましょう。