「基軸通貨ドルは、いつまで基軸通貨ドルであり続けることができるのか?」
今後の相場においては、上記のようなことを意識しながら取り組んだ方がいいと思います。
BRICS(ブリックス)は、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)、南アフリカ(South Africa)の5か国の頭文字を合わせた造語として知られていますが、近年はBRICS銀行(新開発銀行)をはじめ、金融、経済、通貨などの分野で積極的に交流や協力を行うことで、積極的な進展を遂げていると言われています。
しかし、その名付け親であるジム・オニール氏は、以前「ドルの他に基軸通貨となるものはない」と述べています。
確かに、私も「少なくとも今現在はその通りだ」と思います。
ところが未来永劫そうなのかと言うと、「だんだん怪しくなってきている」と思います。
なぜなら、上記の5か国に加え、最近はサウジアラビア、イラン、アルゼンチン、アルジェリアなども相次いでBRICSに加盟する道を選んでいるからです。
しかも、それだけではなく、世界の中央銀行の「金(Gold)購入」が、55年ぶりの高水準となっているからです。
これはどういうことかと言うと、「ドルの不信任」や「脱ドル化」を意味します。
ドルの保有を増やすのではなく、金(Gold)の保有を増やしているからです。
したがって、これは「米国の不信任」や「脱米国化」ということでもあります。
では、なぜこのようになってしまったのでしょうか?
以下のようなことが考えられるでしょう。
・米国の抱える債務が31兆4000億ドルの上限に到達した。
・米国は赤字まみれなのに、現在もウクライナへの資金援助を止めていない。
・米国は、ほぼ無制限にドル紙幣を刷りまくっている。
・近年、米国は何かあればすぐに「ドル利用禁止」等の「経済制裁」に踏み切ってくる。
上記のようなことが理由として考えられますが、要するに「国家として、ドルに依存するのは危険である」という判断が、各々の国に働いているのだと思われます。
ちなみに、大ベストセラーになった『金持ち父さん 貧乏父さん』(筑摩書房)の著者、ロバート・キヨサキ氏は、以下のようなことを述べています。
「FRB(連邦準備制度理事会)は米財務省とタッグを組み、ほぼ無制限にドル紙幣を擦りまくっている」
「裏付けのないドル紙幣を後生大事にため込んでいても、間もなく大暴落になってしまい、泣きを見るのは確実だ」
さて上記のように、通貨ドルに対して警鐘を鳴らすロバート・キヨサキ氏は、前述の世界の中央銀行と同様、金(Gold)に強気で、昨年末には「2023年に金価格は3,800ドル(現在は1865ドル)まで高騰する」との予想も語っています。
このように、ドルに警鐘を鳴らし、金(Gold)には強気の見方は今や「普通」と言っても過言でなくなってきていますが、金融大手クレディ・スイスのゾルタン・ポズサー氏も同様の見方を示しています。
ゾルタン・ポズサー氏は「7年後にはBRICSが欧米諸国をしのぐ世界経済の中心になる」と予測しており、その際には金(Gold)を通貨の価値基準とする「金本位制」になるかもしれないと述べています。
しかし、「転んでもただでは起きない」のが米国です。
以下に、少し整理してみます。
・2月1日、金価格は1トロイオンス=1959.7ドル
・2月1日、ドル円は1ドル=128.53円
・2月3日、米雇用統計で「誰も予想していなかった強い結果」が発表された
・2月11日、金価格は1トロイオンス=1865.1ドル(2月1日から約100ドル安)
・2月11日、ドル円は1ドル=131.38円(2月1日から約3円安)
上記の「時系列」を見れば、2月1日の時点で金高・円高(ドル安)であったのが、2月3日の米雇用統計を「きっかけ」に、金安・円安(ドル高)に押し戻された経緯が分かります。
先週のコラムで述べたように、米雇用統計発表の直前には「人員削減のオンパレード」と言っていいほど、米国企業の人員削減のニュースが相次いでいたところ、誰も予想していなかった強い雇用統計の結果が発表され、再び「ドル高」に押し戻されたのが今回の流れです。
だからこそ、米雇用統計の信憑性が怪しいわけですが、多くの識者も指摘するように、米国政府は「どんな手」を使っても、基軸通貨ドルを守ろうとするのだと思われます。
すると、今後も考えられるのは、ドル安が騒がれだすと、米国政府は「全力で」ドル高に押し戻そうとするだろうということです。
したがって、前述のように、今の世界には確実に「ドルの不信任」や「脱ドル化」の流れが存在しますが、それでも「ドル安」は一直線には進まないだろうと予想できるのです。
このような全体像を頭に入れて、今後も取り組んでいきましょう。