近年、相場の世界ではAI(人工知能)やHFT(高速・高頻度取引)が存在感を増しています。
そして相場の世界で、このように人が指図せずに機械的に運用されている資金は、現在2000兆円を超えているそうです。
また一説では、外国為替市場における取引量の「約92%」をこれら「機械」が占めているといいます。
今回のコラムでは、これら「機械」が存在感を増す現在の相場の世界で、個人投資家がどのように対抗したらいいのかを考えてみたいと思います。
ちなみに昨年になりますが、テレビ東京の番組『ガイアの夜明け』で、以下のような報道がありました。
【コロナなのになぜ株高? 「ガイアの夜明け」が総力取材! 見えてきたのは・・・】
番組ではHFT(高速・高頻度取引)について言及しており、以下のように説明していました。
・一般の投資家には不可解なスピード(100万分の1秒)で取引して、荒稼ぎする集団
・東京証券取引所の1日の売買代金約3兆円のうち、約半分を占めている
さて、これらのことからも分かりますが、HFT(高速・高頻度取引)は人間の投資家のようにファンダメンタルズ(ニュース等)を熟考することはなく、不可解なスピード(100万分の1秒)で機械的に取引するのみです。
HFT(高速・高頻度取引)の大手業者であるバーチュ・フィナンシャルには、5年間で「1237勝1敗」という驚異の成績もあるそうですが、はたしてこれが「公平なのか?」と、投資家の疑心暗鬼が消えないといった報道もあります。
また大和総研が発表したレポートでは、「不公平感に対する疑念の払拭や、市場の公正性確保に向けた努力を続けていくことが必要」といった提言がなされています。
いずれにせよ、結果としてコロナなのに株高を誘発するなど、HFT(高速・高頻度取引)は不可解な値動きの一因となっています。
ちなみに、前述のHFT(高速・高頻度取引)の大手業者であるバーチュ・フィナンシャルは、株の個別銘柄から金(Gold)や円、ドルまで、約2万5000種類の金融商品の価格を常時監視しているそうです。
一方でAI(人工知能)ですが、こちらは「非常にシンプルな仕組みで取引」するものから「非常に複雑な仕組みで取引」するものまであり、多種多様のAI(人工知能)が存在しています。
ただし、やはり、人間の投資家のようにファンダメンタルズ(ニュース等)を熟考するのではなく、機械的に取引するものが主体です。(一部、ニュース等の「キーワード」に反応するものがある)
ここで、AI(人工知能)への対抗策を考える上でも、個人投資家が知っておいた方がいいと思われることを以下に整理してみます。
・この数年で、AI(人工知能)によるトレードが爆発的に増えている。
・AI(人工知能)によるトレードが爆発的に増えたことによって、かつて上手く機能した戦略でも現在は機能しなくなっている。
・「上手く機能する戦略」の消費期限がどんどん短くなっている。
・AI(人工知能)の中でも、非常に複雑な仕組みで取引するシステムの構築には、数学や統計学やデータサイエンスの博士号を持つ人達が関わっている。
・一般的には、1分足や5分足といった1日に何回もトレードする戦略よりも、1時間足や日足など、時間枠を長くした方が結果は改善する。(直近10年間の過去データの検証による)
(直近10年間の過去データの検証による)
ドテン=現在のポジションを決済すると同時に、これまでの売買と逆のポジションを保有する注文
・相場格言「損切りは早く、利は伸ばせ」において、例えば「損は1、利は3」など、あらゆる組み合わせを検証すると、ごく一部の銘柄を除き、ほとんどの銘柄で「損は10、利は1」や「損は2、利は1」など、格言とは逆にした方が「勝率」そのものが上昇し、結果が改善する。
(直近10年間の過去データの検証による)
ところで上記は、AI(人工知能)の分野の第一人者とも言われる専門家が、コンピュータを使って、数百万回テストした最新の結果に基づいたものです。
したがって、自分でオリジナルの相場戦略を構築するのであれば、上記のことは参考にしておいた方がいいと思います。
一方で、自分でオリジナルの相場戦略を構築するようなことは「めんどくさい」と思う人は、以下のことを参考にすると良いと思います。
・東京大学の某投資クラブの代表は、個人投資家はあくまで中長期的な視点で投資すべきだと述べた。
・金融情報学が専門で東京大学大学院の和泉教授は「人間の方が優れている点もある」と言い、「何かおかしいぞ」「そろそろ何かが起こるのではないか」といったような人間的な感覚こそを大事にすべきだと述べた。
要するに、個人投資家の戦略としては、「中長期的な視点でドッシリと構えて、ニュース等をまともに分析して、含み益になったら決済する」というくらいのスタンスが良いということです。
今回は、これらの話を、ひとつ参考にしていただけたら幸いです。