市場(相場)が究極的に効率化されると、ありとあらゆる情報が「直ちに」価格に織り込まれて、未来の値動きが「予測不可能になる」という仮説です。
ところで近年は、相場の世界においてもAI(人工知能)の台頭が凄まじいですが、競争激化の中、AIは他のAIの動きを予想して、それに勝とうとしています。
それに対して、他のAIに動きを読まれないように「不規則に戦略を変えるAI」もあるようです。
「AI 対 AI」という構図で、まるで「デジタル戦争のようだ」と言われています。
ちなみに、このようなAIの存在が、未来の値動きの予測を難しくしていると言われています。
米国の「カンザスからNY」まで1600kmを一直線に貫く通信回線を敷設し、0.001秒の短縮に熱狂した男たちの実話を映画化した『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』という映画もあります。
相場におけるHFT(超高速取引)の話です。
一方で、書籍『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』(文春文庫)では、0.001秒どころか、10億分の1秒の差で先回りするHFT(超高速取引)の姿についても描かれています。
このようなHFT(超高速取引)は、「フラッシュクラッシュ(瞬間的な暴落)」を引き起こすなど、その「悪影響」が取りざたされており、世界中の投資家たちから不満が噴出しています。
相場における「公平性を阻害している」という指摘があるのです。
事実、HFT(超高速取引)業者の「バーチュ・ファイナンシャル」には、1237日無敗という驚異の成績もあるようです。
そこで、HFT(超高速取引)は規制すべきという議論が世界中で沸き起こっているのですが、現状は「検討へ」という段階であり、未だにHFT(超高速取引)が跋扈(ばっこ)しています。
そのような中、先週は「NYダウが前日比1115ドル安という暴落を演じたかと思えば、その後、一転切り返し、終わってみれば、前日比99ドルのプラス」という展開や「NYダウが800ドル超急落し、その後、急速に買い戻され、結局66ドル安」という展開がありました。
この時、為替も、大きな乱高下はなかったものの、NYダウの動きに翻弄されました。
日本の金投資第一人者として知られ、チューリッヒの子鬼(スイスの諸銀行を舞台として、金融市場で投機筋が暗躍していることを指した表現)とも言われていた元トレーダーの豊島逸夫さんは、このようなNYダウの乱高下について、次のように語っていました。
【ダウが暴落の過程では、百戦錬磨のツワモノたちの顔も、さすがに青ざめ、言葉少なになっていた。その後、前日比プラス圏まで切り返す急反騰局面では、ハッピーとか安堵というより呆気にとられた様子であった。普段なら、見事に後講釈を語ってくれるベテラン、アナリスト氏も、想定外の展開に寡黙であった】
結局のところ、このような、ある意味「滅茶苦茶な」値動きの要因は、前述のように「AI 対 AI」の構図や、HFT(超高速取引)が跋扈(ばっこ)しているところにあると思われます。
では「人間の」投資家に、対抗策はないのでしょうか?
そして多くのAIも、短期成果追求型、もしくは超短期成果追求型です。
一方で、「人間の」投資家は、時間を味方につけることができるという点が「武器」です。
したがって、「人間の」投資家の対抗策とは「中長期で取り組むことである」と、多くの専門家たちは言います。
私もその通りだと思います。
そのような中、冒頭で述べた、未来の値動きが「予測不可能になる」という「効率的市場仮説」は真実なのでしょうか?
これについては、「いつ」「どうなるか」といった際の「いつ」については、予測が難しいと私も思います。
しかし「どうなるか」については、上がり過ぎたものは下がる、下がり過ぎたものは上がる、といったように、予測は可能だと思います。
例えばコロナ禍での株高など、多くの人が「おかしい」と感じていることが、いつまでも続くことはないと言えるのではないでしょうか。
ところで、世界でも「バブル研究」に関しては「第一人者」として知られる、米資産運用会社GMOの共同創業者であるジェレミー・グランサム氏という方がいます。
実際に、過去のバブル予測をいくつも的中させてきた方です。
そんなジェレミー・グランサム氏が、最近以下のような予測を発表しました。
・米国の代表的な株価指数であるS&P500は、2500まで下がる。(現在は4431)
・米国株への投資は避けるべきである。
・狙い目は新興国株と日本株である。
・金(Gold)や銀(Silver)も良い。
・仮想通貨については、私は信じない。
上記についても、「いつ」かは分かりませんが、予測が的中する可能性はあるでしょう。
そして、ヘッジファンドの帝王と呼ばれるレイ・ダリオ氏も、最近ブルームバーグの取材で「米国の凋落は避けられない」と語っていましたので、やはり「米国株への投資は避けるべきである」が、正解になるのではないでしょうか。
前述のように、HFT(超高速取引)やAIによる、ある意味「滅茶苦茶な」値動きは今後も起こると思いますが、「人間の投資家の対抗策」というものをしっかりと意識して、忍耐強く、慎重に、中長期で取り組むべきだと思います。
引き続き、頑張りましょう。