GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)という言葉が定着して久しいですが、先月は『GAFA next stage ガーファ・ネクストステージ: 四騎士+Xの次なる支配戦略』(東洋経済新報社)という本が出版されました。
まさに、そのGAFAという言葉自体を定着させた著者、スコット・ギャロウェイ氏による最新版になります。
ちなみに上記の「+X」とは、マイクロソフト、ネットフリックス、テスラなどの企業を指しています。
そんなGAFAですが、たった4社であるにもかかわらず、なんと昨年7月時点で、日本株全体の時価総額を上回りました。
はたして、このような現状は「まとも」と言えるのでしょうか?
そして、米国株式市場も「まとも」と言えるのでしょうか?
上記の本には、改めて私達投資家が「直視」すべきだと思われる点が、いくつも記されていました。
以下に整理します。
・アップルの時価総額が1兆ドルに達するまで42年かかったが、パンデミックが起きてからわずか20週間(2020年3月から8月)で2兆ドルを突破した。
・(上記と)同じ期間に、テスラは世界で最も価値の高い自動車会社になった。それだけでなく、その時価総額はトヨタ、フォルクスワーゲン、ダイムラー、ホンダの「合計」よりも大きくなった。
テスラの生産台数が40万台で、他の4社の生産台数の合計が2600万台という事実にもかかわらず、である。
・倒産が増加し、移動も制限される中で、高級自動車メーカーであるテスラの株価が上がる世界とは何なのか。
・歴史上どの国よりも革新的な社会だと国民が信じているアメリカ。そんなアメリカの人口は世界人口の5%だが、感染者数と死者数は全世界の25%を占める。
・新型コロナの流行がしだいにパンデミックに発展していたとき、夏にはアメリカでの死者が18万人にのぼり、失業者数は過去最高、ウイルス鎮静化の兆しはまったくなかった。それにもかかわらず、株式市場はほぼコロナ以前のレベルまで回復した。
・『ブルームバーグ・ビジネスウィーク』は6月号の特集記事で、その(上記の)現象を「大いなる断絶」と呼んだ。その記事によると「ウォールストリートの専門家達でさえ、首をかしげていた」。それから2カ月後、アメリカでは1日1000人が新型コロナで死ぬ一方で、株価指数は上がり続けていた。
・2020年の3月から7月までで、新型コロナによる死者は世界で50万人を超えた。そのうち15万人以上がアメリカの死者だった。ウイルスを封じ込めるためのロックダウンも効果がなく、社会は恐慌とさえ言えるほどの不況に陥った。何十という有名企業が破産を申請した。失業率は3倍になり、4月に史上最高を記録した。それと同時期の5カ月で、主要テック企業(ITテクノロジーを活用してビジネスを行っている企業)9社の時価総額は「1兆9000億ドル増加」した。普通の時期ではなく、世界的に100年に1度と言われる最悪の5カ月間でのことだ。しかも彼らは、世界的な病気の蔓延で利益が上がると思われる製薬会社や医療関連会社ではない。
さて、上記から浮かび上がってくることは、どんなことでしょうか?
それは「まともではない」というレベルを遥かに超えて、「狂っている」とさえ言えるような現状ではないでしょうか?
本著は「資本主義の功罪」について言及していましたが、まさに経済が、極めて「不健全」になってしまったということなのでしょう。
したがって、このような現実を生み出している米国株式市場について、「そんなものだ」と「麻痺」したような感覚で向き合うのではなく、「おかしいものは、おかしい」と考えて向き合うべきだと思います。
なぜなら、いつか「大どんでん返し」があるかもしれませんし、むしろ「大どんでん返し」がある方が「自然の摂理」に合致するからです。
そして「大どんでん返し」があれば、為替市場も「大どんでん返し」となるでしょう。
株式市場と為替市場には「明確な相関関係」があるからです。
実際のところ、コロナ禍での株価上昇が止まらない中、ひたすら売られてきたのが「円」でした。
つまり、いったん「大どんでん返し」で株価が大暴落すると、今度は、ひたすら「円」が買われることになるでしょう。
最近、米金融大手のゴールドマン・サックスは次のような見方を示しました。
【円は間違いなく安い。長期的視点からすれば「極度に過小評価」された通貨だ】
コロナ禍での株価上昇と「セット」で、ひたすら売られてきた「円」は、遂に「極度に過小評価」というレベルまで安くなったということです。
ただし、この「狂っている」とさえ言えるような現状は、さらに「加速」するかもしれませんし、いつ「是正」されるかも分かりません。
したがって、「トレンド・イズ・フレンド」という相場格言がありますが、当面は、相場トレンドに追随するスタンスで取り組むのがよいと思います。
それでも「おかしいものは、おかしい」わけですから、「慎重さ」が絶対条件となります。
著名投資家ウォーレン・バフェット氏の長年の右腕であるチャーリー・マンガー氏は、現在の株式市場が「ドットコム・バブルの頃よりも馬鹿げている」と語りました。
ちなみにドットコム・バブルとは、1990年代前期から2000年代初期に起こったことで、インターネット関連企業が実態を伴わない異常な高値になったバブルのことです。
相場トレンドに追随しつつも、その「おかしさ」を十二分に自覚して、慎重に取り組んでいきましょう。