一転するかもしれないこと

 

 

 

先週は約48か月ぶりにドル円が115円台に突入し、週末の金曜日には一気に113円台まで下落しました。

 

 

 

そして最近、やたらと「悪い円安」と報じられるようになってきました。

「輸入物価の上昇に繋がり、国内経済に打撃を与えるから」というのが、その理由です。

 

 

 

ちなみに日本の「輸出依存度」は、長らく15%程度で推移しています。

したがって、いくら円安で「輸出」が増えたとしても、日本全体に与える影響は15%程度しかなく、むしろ、85%の「内需」が減速する方が問題であることは、昔から明白であったと思います。

 

 

 

そもそも、通貨(の価値)が高いということはその国の信用力が高く、実力が評価されているからであって、通貨(の価値)が安いというのはその逆です。

これまで財政破綻した国々もすべて、例外なく通貨安から破綻していったわけです。

 

 

 

ところが、ずいぶんと長い間、メディアは「円高は輸出企業がダメージを受けて、経済成長がマイナスになる」というような報道を続けていました。

まるで「悪い円高」と言わんばかりの報道だったのです。

 

 

 

それが、ここにきて、一転して「悪い円安」報道に切り替わりました。

 

 

 

日本全体として考えた時、昔から明白であった「悪い円安」が、ようやく本当に「悪い円安」として、その実態が「まともに」報じられるようになったと私は感じています。

 

 

 

さて以前のコラムでも言及したことがありますが、「同じモノは同じ値段で買えるはずだ」という「購買力平価説」が基になった「ビッグマック指数」によると、現在、日本円は「異常に円安になっている」ことが分かります。

 

 

 

例えば現在、米国のビッグマック(マクドナルド)は5.66ドルで販売されています。

1ドル=113円」で計算しますと、640円に相当します。

ところが日本では、同じビックマックが「390円」で販売されています。

 

 

 

両者を比較すると分かりますが、米国の方が「64%」も割高なのです。

逆に言えば、日本の方が、かなりの「割安」だと言えます。

 

 

 

つまり専門的に言いますと、「円」の「実質的な価値」を示す「実質実効レート」が安いということなのです。

 

 

 

たとえ、表面的には、ドル円が「115円台(今は113円台)」「約48か月ぶりの円安水準」であったとしても、実質的には「とんでもない」円安になっており、50年ぶりの円安水準となっているのです。

 

 

 

近年の「円安」については、日本経済新聞が以下のように、比較的「まともに」実態を報じていたと思います。

 

 

 

 

 

【円の実力、50年ぶり低水準に接近 円安で成長力高まらず】

 

 

 

 

 

要するに、これまで円高を「悪」とし、円安を「善」とし、日本は国を挙げて「円安」に誘導してきた面があるのですが、それが「間違いだった」という話なのです。

 

 

 

そして「悪い円高 ⇒ 悪い円安」のように、相場の世界においても「一転するかもしれないこと」には注意を払う必要があります。

 

 

 

例えば最近、「円」以上に、異常なまでに安くなっているのが、トルコの「トルコリラ」です。

 

 

 

下がるには下がる理由はありますが、以下のような「強気材料」は、意外と見落とされているように感じます。

 

 

 

 

 

・実質GDP成長率が、前年同期比21.7%のプラス成長となっており、世界トップクラスである。

 

 

 

UAE(アラブ首長国連邦)の実質上の指導者であるムハンマド皇太子は先週の24日、トルコのエルドアン大統領と会談し、ムハンマド皇太子に同行した国営投資会社・アブダビ開発ホールディングスの最高責任者が、トルコ投資を支援するためにUAEは「100億ドルの基金を用意している」と語った。

 

 

 

・国営投資会社・アブダビ開発ホールディングスは、トルコ政府系ファンドと経済協力協定に署名し、アブダビ証券取引所(UAE)とイスタンブール証券取引所(トルコ)との間でも協定が締結され、今後はUAEから「エネルギーやテクノロジー、医療、港湾・物流など」の分野での投資が期待されている。

 

 

 

 

 

上記のような「強気材料」がある以上、今度は上昇へと「一転するかもしれない」ということで、意識しておいた方がいいと思います。

 

 

 

一方で、ここ最近、他通貨に比べて圧倒的に強くなっている通貨が米国の「ドル」です。

 

 

 

しかし、米国は【米政府資金、来月15日まで デフォルト懸念再燃の恐れ】と報道されているように、デフォルト(債務不履行)の恐れがあるわけです。

イエレン米財務長官も、米政府の財政資金は1215日まで確保されているものの、その先は枯渇する恐れがあると警告しています。

 

 

 

そんなデフォルト(債務不履行)の恐れのある国の通貨(ドル)が、他通貨に比べて圧倒的に強いという、ある意味「大丈夫か?」と思わざるを得ない状況なのです。

 

 

 

そのような中、先週金曜日、南アフリカで新型コロナウイルスの新たな変異株(オミクロン株)が確認されたことが「きっかけ」となり、ドル円は115円台から113円台へと一気に下落しました。

 

 

 

いずれにせよ、これら全体の雰囲気からも分かるように、最近の相場は、とにかく「極端」な値動きになりがちなのです。

米国株も、今年だけでも「何十回」も史上最高値を更新しました。

しかし、そんな近年の相場に、どれだけ「合理性」があると言えるでしょうか?

 

 

 

先週は、【記録破りの1年、株式ファンドへの資金流入が過去19年間の総額上回る】という報道もありましたが、一言で言うと「行き過ぎ」でしょう。

 

 

 

今後の相場についても「更なる行き過ぎ」と「大幅修正」の両方の可能性を考慮すべきと思います。

 

慎重さ、トレンド、トレンドの転換について、強く意識しながら取り組んでいきましょう。