円安が止まりません。
ドル円は114円台前半まで上昇し、2年11か月ぶりの円安水準となりました。
ここで、今後の為替相場について考えてみたいと思います。
まず以下に、機関投資家が選ぶ「為替アナリストランキング」で、4年連続で1位となったJPモルガン・チェース銀行の佐々木融(ささきとおる)氏の最近のコメントを紹介します。
・今後ドル円相場が100円を割り込むと、「円高だ」と大騒ぎになるかもしれないが、100円を割り込む程度では、実質的にまだかなりの円安だ。
・「円」の「実質的な価値」を示す「実質実効レート」は、現在1973年2月の変動相場制移行直前以来の円安水準にある。
・(上記のように「円」以外で)これだけ割安な通貨は、トルコリラ、ブラジルレアル、コロンビアペソだけだ。
・ドル円相場はあまりに「円」が安過ぎるので、円高方向に調整するだろう。
・ドル円相場はいずれ「1ドル=100円」を割り込み、最終的には100円台に戻らなくなるだろう。
私も佐々木氏の意見に「同意」します。
また私は、近年の為替相場について、同じく近年の株式相場の高騰に対して感じる「違和感」に匹敵するくらい、強烈な「違和感」を感じています。
メディアは「もっともらしい理由」で値動きを説明していますが、正直なところ、強烈に「違和感」を感じます。
ところで、過去のコラムでも何度か言及したことがありますが、上記のコメントに際し、佐々木氏も言及していたので、ここでもう一度「ビッグマック指数」について言及します。
ちなみに「ビッグマック指数」とは【同じモノは同じ値段で買えるはずだ】という「購買力平価説」が基になっています。
約30年前からイギリスの経済誌『エコノミスト』が発表しているものです。
例えば現在、米国のビッグマック(マクドナルド)は5.66ドルで販売されています。
つまり、日本円では646円に相当します。(10月16日時点、1ドル=114.24円で計算)
一方、日本では、ビックマックは「390円」で販売されています。
両者を比較すると分かりますが、米国の方が「65%」も割高なのです。
逆に言えば、日本の方が、かなりの「割安」だと言えます。
要するに、これは佐々木氏の言う通り、【円(の価値)が安過ぎる】ということなのです。
ちなみに【同じモノは同じ値段で買えるはずだ】ということで、米国のビッグマック5.66ドルから算出しますと、ドル円相場は【1ドル=68.90円】が適正となります。
(390円÷5.66ドル=68.90円/ドル)
だからこそ、佐々木氏も【今後ドル円相場が100円を割り込むと、「円高だ」と大騒ぎになるかもしれないが、100円を割り込む程度では、実質的にまだかなりの円安だ】と述べているのです。
そして、現在の為替相場は「異常に円安になっている」と言っても過言ではないのです。
ここで「ビッグマック指数」を基に、参考として、多くのFX会社が取り扱っている通貨の中で、割高な通貨から順番に並べてみたいと思います。
1、スイスフラン
2、ドル
3、カナダドル
4、ユーロ
5、豪ドル
6、NZドル
7、ポンド
8、円
9、トルコリラ
上記のように、「ドル」や「スイスフラン」は特に割高と言えます。
一方で、「円」や「トルコリラ」は特に割安と言えます。
ビックマック指数、つまり【同じモノは同じ値段で買えるはずだ】という「購買力平価説」を基に考えれば、上記の通貨の中で、現状「ドル」や「スイスフラン」は売られる方が自然であり、「円」や「トルコリラ」は買われる方が自然なのです。
しかし、ロジック通りには動かないのが「相場」です。
そして近年は特に、ロジックを無視した相場展開が目立っています。
また実際に、最近はプロの投資家達の間からも【ドル円は海外通貨投機筋のおもちゃにされている】といった声が上がっているのですが、近年はドル円に限らず、ありとあらゆる相場が【おもちゃにされている】と言っても過言ではありません。
しかしそのような中でも、上がり過ぎたものは下がり、下がり過ぎたものは上がるのが「相場の真理」ですので、このような「事実」は、きちんと把握しておくことが大事です。
では、今後の為替相場については、どう考えたらよいのでしょうか?
「トレンド・イズ・フレンド」という相場格言があります。
「トレンドに乗れ」「トレンドに逆らうな」といった意味になります。
まずはこの格言を念頭に、当面は上昇トレンド、下落トレンド等の「トレンド」を意識して取り組むことが正解になると思います。
一方で、前述のように、現状は、ありとあらゆる相場が【おもちゃにされている】わけです。
したがって、常に冷静になり、上がり過ぎたものは下がり、下がり過ぎたものは上がるのが「相場の真理」である、ということからも目を背けるべきではありません。
このようなことを考えますと、当面は「トレンド」を意識して取り組みつつも、常にポジション量に留意することがポイントと言えそうです。
引き続き、慎重に取り組んでいきましょう。