例えばドル円で、「1ドル=1円」や「1ドル=500円」を想定する人はいないと思いますが、ある程度の「値幅」や「値動き」を想定することは大事です。
そのような中、先週、FX各社などの「最新予測」が報じられました。
その「最新予測」の一部は、以下のようになっていました。
【ソニーフィナンシャルホールディングスの今後3か月の為替見通し】
ドル円: 107.00円~111.00円
ユーロ円: 129.00円~137.50円
【ニッセイ基礎研究所の3か月後の為替見通し】
ドル円: 110円台
ユーロ円: 135円程度
【日本総合研究所の2021年9月末までの為替見通し】
ドル円: 105.00円~114.00円
ユーロ円: 125.00円~139.00円
【マネースクエアの2021年9月末までの為替見通し】
ドル円: 105.00円~112.00円
ユーロ円: 128.00円~140.00円
【三菱UFJ国際投信の6か月後の為替見通し】
ドル円: 106.00円~114.00円
ユーロ円: 130.00円~142.00円
【大和アセットマネジメントの2021年末の為替見通し】
ドル円: 108.00円
ユーロ円: 130.00円
さて各社の違いはあるものの、ある意味「常識的な」予想だと思われます。
しかし、ここで気を付けなければならないのは【想定外】です。
近年、最も為替相場が激しく動いたのは「2016年6月24日」でした。
ブレグジット(イギリスのEU離脱)が決まった日です。
この時、為替相場は【わずか1日で】以下のように動きました。
ドル円: 106.79円 → 98.88円 高値と安値の差「7.91円」
ユーロ円: 121.95円 → 109.52円 高値と安値の差「12.43円」
ポンド円: 160.06円 → 133.16円 高値と安値の差「26.90円」
上記のように、想定外のことがあれば、わずか1日でも「極めて激しい値動き」が生じるということです。
したがって、私達個人投資家は「常識的な」予想を立てることも大事ですが、常に【想定外】も意識しておくことが大事だと言えます。
そして仮に【想定外】が起これば、それは激しい「円高」になるだろうと予想できます。
ですので、「円売り」のポジションを保有する際は、特にポジション量には留意することが大事です。
そのような中、先日のコラムでもお伝えしたように、機関投資家が選ぶ「為替アナリストランキング」で、4年連続で1位となったJPモルガン・チェース銀行の佐々木融(ささきとおる)氏は、「早晩100円割れ(ドル円)となるような円高局面がいつ訪れてもおかしくない」と述べています。
佐々木氏の予想は、前述のFX各社などの予想とは異なっていますが、現状の、コロナ禍でも続く「しつこい株高」や「しつこい円安」を考えれば、早晩100円割れ(ドル円)となるような円高局面がいつ訪れてもおかしくない、と私も思います。
さて【想定外】は、金融用語で「ブラックスワン」とも言われますが、全く予想外の出来事が発生すると、確率論や経験、常識が通用しないため、社会や市場に極めて大きな衝撃を与えます。
そして、相場も「大荒れ」となります。
そのような「ブラックスワン」について、英国大手銀行スタンダード・チャータードの調査部門の世界責任者は、以下のような出来事が「ブラックスワン」になるかもしれないと言っています。
・米民主党が増税や規制強化の法制化に着手する
・中国が人民元の上昇を容認し、1ドル=6元まで元が上昇する
・投資家とトレーダーが資金を振り向け、銅が50%値上がりする
・OPEC(石油輸出国機構)の協力体制が崩壊し、原油が1バレル=20ドルに下落する
・ECB(欧州中央銀行)の景気支援能力が疑問視され、ユーロが1.06ドルまで下落する
・イエレン米財務長官がドルを口先介入で押し下げ、ドルが15%急落する
・新興市場株が30%下落する
・バイデン米大統領が辞任し、ドル下落が加速する
さて、上記のような出来事が「ブラックスワン」になるかもしれないとのことですが、そんなことは「あり得ない」と断言することはできないと思います。
コロナ禍でも株高になるような時代だからです。
したがって、私達個人投資家は常に「常識的な」予想と、【想定外】の両方を考えておく必要があります。
それは、行動ベースに落とし込むと、「慎重に」の一言に尽きます。
【想定外】を意識しつつ、気を抜かずに頑張っていきましょう。