近年、相場の世界における「AI」すなわち「人工知能アルゴリズム」について、多くの専門家が以下のようなことを指摘しています。
・AIは、損をせず儲けるためにHFT(超高速取引)で薄利多売を繰り返している。
・AIはナノ秒(10億分の1秒)で判断し、ミリ秒(1000分の1秒)の売買を実行する。
・AIが薄利多売で利益を積み上げているということは、時間軸が短ければ短いほどAIが有利になる確率は高くなる。
・AIに未来を見通す力はない。
・個人投資家がAIに対抗するうえで重要な鍵となるのが、中長期で利益を求めるという「時間感覚」である。
さて先日、IMF(国際通貨基金)が「日米の株価が1から100の数値化で、100に近い大幅割高である」と断じましたが、コロナ禍の現状においても株高が続くのは、いわゆる「マネーのジャブジャブ」及びAIの影響があると考えられます。
また、近年の株価が買われ過ぎで「まともでない」動きをしている以上、株価に影響を受けている現状の為替等も「まともでない」動きをしているものと考えられます。
したがって前述の専門家の指摘にあるように、個人投資家が「まともでない」値動きを引き起こすAIに対抗するには、中長期で利益を求めるという「時間感覚」が重要で、例えば株価については、企業の「成長力」や「魅力」といったものを基準に判断する「王道」から目を背けないことが重要です。
同様に、為替については各国の経済状態がどうなのか、取り巻く環境はどうなのか・・・といったものを基準に判断する「王道」から目を背けないことが重要です。
もちろん短い期間で儲けることができるのであれば、それに越したことはありませんが、実際は時間軸が短ければ短いほどAIが有利になるのが今の相場の現実ですから、このように「王道」に則って、中長期で利益を求めるという「時間感覚」を失わないことが重要です。
ところで「王道」に則って判断しますと、やはり昨今の株高・円安は「異常」だと判断できます。
根拠として、直近の以下のようなニュースは把握しておくべきだと思います。
・ドイツのオンライン決済会社「ワイヤーカード」は、DAX(ドイツ株価指数、ドイツの超優良企業30社で構成される)に採用されていた会社であり、ソフトバンクグループも出資していたが、不正会計疑惑が浮上する中で、先日破産申請をした。
・「ワイヤーカード」の監査を行ってきた大手監査法人「アーンスト・アンド・ヤング」で、「ワイヤーカード」を担当していた2人が現在ドイツ銀行の会計責任者など幹部になっており、ドイツ銀行は「最も問題のあるグローバル銀行の1つ」という烙印を押されている。
・ドイツ国内銀行2位のコメルツ銀行が7000人余りの削減と約400支店の閉鎖を検討している。
・アメリカが、イランの金属部門の輸出を禁じたアメリカの制裁に違反し、イラン金属製品を国外で販売する手助けをしたなどとして、ドイツ企業など計8社を独自の制裁対象に追加した。
・ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプラインに関してトランプ大統領が制裁強化へ踏み切る場合、ドイツはアメリカに対して対抗措置を取る考えで、その準備を進めている。
・中国が「香港国家安全維持法」を施行したことに対して、アメリカは法整備に関与した中国当局者などに制裁を科す法案を全会一致で可決した。
・アメリカは、香港で抗議活動を行う民主派の弾圧に関与する中国当局者と取引を行う銀行に制裁を科す法案を全会一致で可決した。
・アメリカは中国・新疆ウイグル自治区のイスラム教徒に対する人権侵害を巡り、中国高官に制裁を科す準備をしている。
・アメリカの国防総省が中国企業20社を人民解放軍の関連企業に指定し、制裁を科すことが可能になった。
・スイス金融大手UBSの最新調査によると、中国で製造業を営む約8割の企業が他国に生産移管を計画している。
・アメリカ全土で銃の売り上げが急増し、5月は前年比75%増となった。
・ニューヨークで銃撃事件が増え、前年比300%増となっている。
・アメリカで「ブーガルー」と呼ばれる謎の武装極右が勢いを強めており、11月の大統領選前後に本格的なテロを起こす可能性が指摘されている。
このように、コロナ禍に加えて直近だけでも上記のようなニュースがあるのが現状で、IMF(国際通貨基金)も「日米の株価が1から100の数値化で、100に近い大幅割高である」と断じている通り、やはり昨今の株高は「異常」であり、株高の影響を受けて進む円安も「異常」だと言えます。
しかし冒頭で述べたように、今の相場はAIが主導しているため、個人投資家としては「まともに考えると、今の相場はどうなのか?」といった「視点」を失わずに取り組むことが大事だと思います。
世界3大投資家の一人であるジム・ロジャーズ氏は「いつの日か、必ず終わりが来る」「ある日突然、相場参加者の態度が変わるときが必ずやって来る」と言っています。
私達は、株の暴落や円の急騰をしっかりと想定したうえで取り組んでいきましょう。