先週のコラムに続いてですが、「まともな投資家は新型コロナウイルスの行方を見極める姿勢です」ということで、今週も引き続き、新型コロナウイルスの行方を中心に考察してみたいと思います。
新型コロナウイルス等に関連しまして、最近の相場においては「理解できること」と「理解できないこと」が混在していました。
以下にそれを記したいと思います。
【理解できること】
・日本のGDP(国内総生産)が年率マイナス6.3%と発表され、円売りが生じた。
・CDC(米疾病対策センター)が日本を「渡航注意対象国」に認定し、円売りが生じた。
・WHO(世界保健機関)が「東京オリンピック前にウイルスが終息する保証はない」との厳しい見方を明らかにし、イギリスのロンドンから「東京オリンピックがダメなら、ロンドンで開催を!」とのニュースが流れ、円売りが生じた。
・日本国内で予定されていたイベントが相次いで中止されている状況が意識され、円売りが生じた。
【理解できないこと】
・上記のような状況にもかかわらず、日経平均株価が2月19日、20日と上昇し、「買い優勢」で推移した。
・新型コロナウイルスが世界経済に与える影響を無視するかのように、NYダウは史上最高値圏、ナスダック総合指数、S&P500種株価指数が2月19日に史上最高値を更新した。
・ロシア政府が先週から、すべての中国人の入国を禁止し始めた。
このような深刻な事態にもかかわらず、株価が上昇した。
・「中国政府の発表はウソ」と方々で言われている中、新唐人テレビ(アメリカNYに本部を置く中国語専門のテレビ局)は、武漢市にある火葬場にかたっぱしから電話取材した結果、2月12日までに8000人が死亡していると報じた。(中国政府の当時の発表は1000人程度)
このような深刻な事態にもかかわらず、株価が上昇した。
・神戸大学の岩田健太郎教授が「僕はプロなので。自分がエボラにかからない方法、SARSにかからない方法は知ってるわけです。あるいは他の人をエボラにしない、SARSにしない方法とか。
施設の中でどういう風にすれば、感染がさらに広がらないかっていうことを熟知しているからです。それがわかっているから、ど真ん中にいても怖くない。
アフリカにいても、中国にいても怖くなかったわけですが、ダイヤモンド・プリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました。これはもう、COVID-19に感染してもしょうがないんじゃないかと、本気で思いました」と発言した。
このような深刻な事態にもかかわらず、株価が上昇した。
・中国政府が、CDC(米疾病対策センター)の専門家が国内に入ることを拒否していることから、中国政府の発表以上に現実はもっと酷いと噂されている。
このような深刻な事態にもかかわらず、株価が上昇した。
・各国の報道で、新型コロナウイルスに感染していると最終的に診断されるまでに、6回陰性と判定され、7回目で陽性と判定されたケースがあることが明らかになった。
このような深刻な事態にもかかわらず、株価が上昇した。
・米金融大手のモルガン・スタンレーのレポートで、中国の産業活動が50%から80%も落ち込んでいると報じられた。
このような深刻な事態にもかかわらず、株価が上昇した。
・マイクロ・ソフトの創業者ビル・ゲイツ氏が「今回の新型コロナウイルスでは1000万人が感染する」と警鐘を鳴らした。
このような深刻な事態にもかかわらず、株価が上昇した。
さて上記を踏まえまして、個人的には「円売りは、多少は理解できる」が、「株高は、全くもって理解しがたい」というのが率直な感想です。
しかし新型コロナウイルスで騒がれる以前の円売りについては、これまでのコラムでもお伝えしてきたように、【株高に歩調を合わせた円売りが出ている】と報じられていました。
つまり、株高と円安がセットになっていたわけです。
ところが昨今の株高は、株高そのものが全くもって理解しがたいわけです。
ですので、今後株価が下がれば円高になるだろうと思っていたところ、2月21日の深夜0時~深夜2時頃には、ドル円を含め、あらゆる通貨が急激に円高に進む場面がありました。
実はこの時、米国株が下落しており、円高と見事にタイミングが一致していました。
また直近では昨夜の米国株が1031ドル安と暴落しましたが、それと同時に円高が進みました。
本日の日経平均も暴落していますが、本日は、あまり為替は動いていません。
したがって現在の株価が、特に米国株が今後更に下落していきますと、やはりその時は為替も円高に進んでいくのではないかと思います。
ところで全くピンと来ない方が多いかもしれませんが、「日本は世界最大の対外純資産(政府や企業、個人が外国に保有する資産から負債を差し引いたもの)を誇る国」であることが世界中の投資家達には広く知られています。
だからこそ、株が暴落するようなリスク回避の局面では円高に進みますし、それ故に昔から「有事の円」と言われているわけです。
いずれにせよ、昨今の株高には全くもって正当性がないと思われる以上、今後も相場観としては円高を意識して取り組むのがよいと思います。
引き続き頑張っていきましょう。