先々週に引き続き、先週もNYダウ、ナスダックが共に史上最高値を更新しました。
もはや「史上最高値更新」は、ありふれた日常のようになってきています。
私個人としましては、この株高の流れは「前代未聞の異常事態」だと思っています。
そして経済アナリストの森永卓郎氏も、先日テレビに出演した際、こんなことを言っていました。
「経済分析の仕事を始めて30数年経ちますが、この株高は気持ちが悪いと思います」
一方、チューリッヒの子鬼(スイスの諸銀行を舞台として、金融市場で投機筋が暗躍していることを指した表現)と言われていた元トレーダーの豊島逸夫氏は、こんなことを言っていました。
「正直、あまり今の相場をまともに見る気になりません。動いているのは超短期投機筋ですから。まともな投資家は新型コロナウイルスの行方を見極める姿勢です」
また世界三大投資家の一人と言われるジム・ロジャーズ氏は、2人の愛娘に送る人生と投資のアドバイスをまとめた「人生と投資で成功するために 娘に贈る13の言葉」(日本経済新聞出版社)という本の中で、以下のようなことを述べています。
「モノの価格は需給に応じて変化する。たったひとつの国のなかでも、何年にもわたって、政府が歪められた価格を維持することは不可能だ。大帝国であろうが、政府であろうが、需給の原則を覆した者はいまだかつていない」
「多くの人が現実を見失ったときこそ、冷静に需要と供給を計算すること。こんな簡単なことを守るだけで、君たちは成功に近づけるんだ」
さて特に昨今のアメリカの株高については、FRB(米連邦準備理事会)も下支えしており、世界中の投資家達からは「国家ぐるみの粉飾」だという指摘がなされています。
ここで前述のことも踏まえた上で考えますと、私達はしっかりと「現実」を、今であれば新型コロナウイルスの行方などを見極めるように努めるべきではないかと思います。
新型コロナウイルスに関しては、毎日たくさんの報道がなされていますが、以下については把握しておいた方がいいと思います。
・新型コロナウイルスの感染拡大を懸念して、スペインのバルセロナでの開催であるにもかかわらず、携帯見本市「NWC」へ、日本のNTTドコモ、ソニーが相次いで出展中止を発表した。
後日、新型コロナウイルスの感染拡大を懸念して、携帯見本市「NWC」自体が開催中止となった。
・中国では、武漢、北京、広州などを含む全国約80都市が封鎖状態になっており、約4億人が外部と断絶された状態の中で生活している。
・日本やイギリスやフランスなどで、中国への渡航歴のない人からも新型コロナウイルスの感染が広がっている。
・欧米では、中国の新型コロナウイルスを「第2のチェルノブイリ(原発事故)」と呼ぶ声が増えている。
・習近平国家主席は「ウイルスの感染状況は依然として非常に厳しい」と述べた。
・1月29日の時点で、中国は感染者数を7800人と発表したが、イギリスの医学雑誌「ランセット」では7万6000人いると概算していた。
2月13日に、中国は新型コロナウイルス感染症例が新たに1万4840件増加したと発表した。
・WHO(世界保健機関)の事務局長は「世界で新型コロナウイルスの感染が把握されていないケースがたくさんありそうで、発表されている感染者数は氷山の一角に過ぎないかもしれない」と発言した。
・シンガポールで開かれたビジネス会議に参加したイギリス人からも、新型コロナウイルスの感染が欧州へと広がった。
・中国人実業家の郭文貴氏が「武漢でのウイルス感染者の実数は150万人、死者は5万人だ」と発表した。
さて上記について把握すると、株価の「史上最高値更新」がいかに不自然か分かると思います。
なぜなら新型コロナウイルスが世界経済に及ぼす影響を、株価の「史上最高値更新」は完全に無視しているからです。
前述のように、豊島氏は「まともな投資家は新型コロナウイルスの行方を見極める姿勢です」と発言していますし、昨今のアメリカの株高について、世界中の投資家達から「国家ぐるみの粉飾」だという指摘がなされている中で、ジム・ロジャーズ氏は「何年にもわたって、政府が歪められた価格を維持することは不可能だ」と述べています。
またジム・ロジャーズ氏は「多くの人が現実を見失ったときこそ、冷静に需要と供給を計算すること」とも述べています。
これは「冷静に現実を見極めろ」という話に通じると思います。
すると株価の「史上最高値更新」は、前述のことから判断しても、やはり「おかしい」という結論になります。
今後、株価の暴落、株価の大幅調整が間違いなく起こると思いますし、何が「引き金」になってもおかしくありませんが、為替もこの時には大きく動くと思います。
「引き金」は、もしかしたら「イラン」になるかもしれません。
先月のイランのミサイル攻撃について、世間ではトランプ大統領とアメリカ国防省の発言の「食い違い」が指摘されていましたが、先週木曜日には【再びアメリカ軍が駐留するイラク北部の基地にミサイル攻撃があった】と報じられています。
さらに、【イラン“元幹部”米に警告 「報復は始まりにすぎない」】という報道もあり、同幹部の「報復準備は100%できている。引き金に指はかかっている」という発言も報じられています。
このように、株価の「史上最高値更新」の背後には、危機的な状況が多数存在しているのが「現実」です。
慎重に取り組んでいきましょう。