【「量子」に勝つ東芝の超高速計算機、為替で実証へ―金融機関に協業打診】
上記はブルームバーグで先日報じられたニュースです。
東芝は実験で8通貨間の裁定取引で30マイクロ(マイクロは100万分の1)秒以内に9割以上の確率で利益を最大化できる組み合わせを発見できたとのことです。
ちなみにBIS(国際決済銀行)が3年に1度実施する調査によると、2016年の為替市場ではコンピュータープログラム(アルゴリズム)を採用した自動売買が全体の約7割を占めているといいます。
BIS(国際決済銀行)によると、為替市場の1日平均売買代金が558兆円とのことで、コンピュータープログラム(アルゴリズム)を採用した自動売買はその内の390兆円を占めている計算となります。
上記のニュースでは、東芝の超高速計算機については、「百戦錬磨のHFT(高速取引)業者が電子取引システムにつないで使っている技術に、実際に勝てるかどうかは未知数だ」と報じていました。
いずれにせよ、近年のマーケットは人間よりもコンピュータープログラム(アルゴリズム)が主体になっているということなのです。
では、そのようなコンピュータープログラム(アルゴリズム)が主体となった現在の相場は、かつての人間が主体だった相場とどう違ってくるのでしょうか?
私は「理解可能だった相場から、理解不可能な相場に変化したようだ」と思っています。
ちなみにノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー氏も、昨今の相場については「理解不能」と語っています。
一方で過去コラムと重複しますが、「AIに東大を受験させ、東大に合格させよう」という「東ロボ」プロジェクトを実施している国立情報学研究所教授の新井氏は、AIについて以下のように語っています。
・国語力がどうしても伸びず、2011年にスタートした「東ロボ」プロジェクトは、未だに東大合格が遥か遠い
・囲碁の世界チャンピオンには勝てるが、近所のお遣いにすら行けない
・囲碁の世界チャンピオンには勝てるが、2歳未満どころかカラスが持つ能力すら持てる見込みがない
・ぎっしり詰め込まれた冷蔵庫の奥からバターを取り出すことすらできない
上記の新井氏の発言からも分かりますが、AIはあくまで「計算機」であって、人間のような国語力は有していない、と判断できます。
つまりAIに国語力がないことによって、相場においても実態(ニュース等)を無視した展開になりやすい傾向にあると考えられます。
そのような中、このようなことを裏付ける「相場展開」が直近も継続中です。
先日、日本経済新聞は【米企業経営者、97%が景気減速を予測】と報じました。
ところが、株価については【連日の過去最高値更新】です。
ここで、私たちは考えなければならないと思います。
「米企業経営者の97%が景気減速を予測しているのに、株価が連日の過去最高値更新とはどういうことなのか?」と。
さらに別報道では、【2019年、米国株ファンドから20兆円を超える資金が流出した】という報道まであるのです。
こうなってくると、この株高はもはや「理解不能」です。
ところが、この株高の正体は分かっています。
専門的に言うと「先進各国の超緩和政策の結果」であり、具体的には企業の「自社株買い」です。
【2019年、企業の自社株買いが80兆円あった】と報じられているからです。
これが今の株高の正体なのです。
そしておそらく、企業の自社株買いに追随したAIによる「買い」も、連日の過去最高値更新に拍車をかけていると思われます。
さらに為替についても、「株高だから円安なのだ」と言われる展開になっているわけです。
しかし前述のように、米企業経営者の97%が景気減速を予測しているわけです。
ここで、私たちは十分に考える必要があると思います。
「景気と逆行する株高、景気と逆行する自社株買いは不自然ではないか?」と。
実際に、米企業によるこのような「自社株買い」は方々で「国家ぐるみの粉飾」と指摘されているくらいで、整理をしますと、昨今の相場は「一部の人間による不正とAIとの合作」と言えそうです。
では、私たち投資家はどう対処すべきなのでしょうか?
投資格言には「二度に買うべし、二度に売るべし」という慎重さを説いた格言があります。
まずは、このような「慎重さ」が大事だと思います。
そして多くの識者も指摘しているところですが、「何かおかしいぞ」「そろそろ何かが起こるのではないか」といったような人間的な感覚を大事にすべきだと思います。
その上で、現状の相場が「不自然」である以上、忍耐も重要になってくると思います。
繰り返しになりますが、米企業経営者の97%が景気減速を予測している中での株高であり、その結果としての円安になっているわけです。
「おかしいぞ」という観点に立てば、導き出される結論は「株安」「円高」になります。
慎重に、忍耐強く取り組みましょう。