ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が解任されました。
これは、非常に重要なニュースだと思います。
ボルトン氏といえばブッシュ政権で過激な外交政策を展開した「ネオコン」として知られています。
ちなみに「ネオコン」とは新保守主義者と訳され、軍産複合体と結託して、攻撃的・好戦的であることが特徴だと言われています。
イラクが大量破壊兵器を持っている話を捏造し、失敗となったイラク戦争を引き起こしたのも「ネオコン」で、イラク戦争と同様にアメリカの軍事外交力を大きく損なったアフガニスタン占領を企画したのも「ネオコン」だと言われています。
ロシア敵視・テロ戦争積極支持であることも「ネオコン」の特徴だと言われています。
そのような中、ボルトン氏はロシア敵視・テロ戦争積極支持だけではなく、北朝鮮とイランに対しても、軍事力の行使を主張していました。
北朝鮮には先制攻撃、イランには核合意の破棄と爆撃を主張していました。
ボルトン氏は「平壌(ピョンヤン)など火の海にしてしまえ」と発言したことがあり、金正恩氏にとっては宿敵とも言うべき人物でした。
また「リビア方式」と言って、北朝鮮が核廃絶してもリビアのように政権転覆してやるぞ、という意味のことも言っていました。
イランに対しても、「イランと取引を続ける欧州企業も制裁の対象となりうる」「イランをすぐに空爆しろ」と発言したこともあります。
さらに対中国強硬派としても知られており、「中国との核戦争も辞さない」という発言もありました。
また、沖縄の米軍を台湾に移転すべきだという主張もしていました。
ベネズエラで起こったクーデターもボルトン氏が画策したものだと言われており、「来年のベネズエラの石油輸出に1兆2000億円以上の損失を与える」と宣戦布告のような説明を行ったこともあります。
そのようなわけで、ボルトン氏は「死神」「狂人」「悪魔の化身」「アメリカを戦争に向かわせる男」「史上最悪の大統領補佐官」などと呼ばれていました。
しかし、ここにきて「ボルトン大統領補佐官解任」のニュースです。
トランプ大統領は「このままボルトン氏に任せていたら、4回は戦争していたであろう」と語ったそうです。
おそらくトランプ大統領は、大統領再選を目指して「戦争という最悪の事態は回避」という姿勢を鮮明にしたかったのではないかと思います。
いずれにせよ、「世界平和」という観点で考えますと、「ボルトン大統領補佐官解任」は良いニュースだと思います。
そして普段はトランプ大統領に批判的なメディアも、今回ばかりは「トランプ大統領にしては賢明な判断だった」というようなニュアンスで報道しています。
したがって、先週は「ドル」「円」「金・銀」が売られ、「株」が買われましたが、この解任のニュースの影響が大きかったのではないかと思います。
しかし、このまま「平和路線」が堅持され、先週の流れ(「ドル」「円」「金・銀」が売られ、「株」が買われる)が継続するのかといえば、かなり疑問の声が多いようです。
北朝鮮、イラン、米中対立、香港の情勢不安、ブレグジット(イギリスのEU離脱)など、現在の世界を取り巻いている多くの問題が「そんなに簡単に解決するのか?」というわけです。
そのようなことが言われていたら、直近では「サウジ石油施設攻撃のニュース」に「トランプ大統領がEUに対して巨額関税を検討」とのニュースが相次いでいます。
やはり世界は不安定です。
そして、米金融大手のシティ・グループは直近のレポートで「金価格は今後2年で2000ドルを突破し、史上最高値を突破する」との予想を発表しました。
この予想の背景としては、やはり前述のような問題(地政学的リスク)を理由として挙げています。
また、もうひとつの米金融大手であるゴールドマン・サックスも「割安な安全資産を見つけるのは難しいが、円は割安である」「有事の局面では円高になるはずだ」と述べています。
これもまた、前述のような問題(地政学的リスク)を理由として挙げています。
このような中、6月のコラムでもお伝えしましたが、ボルトン大統領補佐官を、資金面で最大のサポートをしていたのは、ヘッジファンド「ルネッサンス・テクノロジーズ」のロバート・マーサー氏です。
またトランプ大統領誕生に際して、大統領選挙の際にトランプ陣営への資金援助を行い、さらにその献金額が断トツで、他の大口献金者を圧倒して最大献金者となっていたのもロバート・マーサー氏です。
そんなロバート・マーサー氏が率いるヘッジファンド「ルネッサンス・テクノロジーズ」が、トランプ大統領誕生以降は特に他を圧倒して儲けているわけです。
間違いなく「裏がある」と考えるべきでしょう。
したがって、今後も「二転三転はある」と考えられますので、先週の流れ(「ドル」「円」「金・銀」が売られ、「株」が買われる)に追随していかない方が賢明だと思います。
慎重に取り組んでいきましょう。