最近出版された本で、「的中率83%のT-modelチャートが予測 いま持っている株は手放しなさい!」(塚澤健二著、株式会社KADOKAWA)という本があります。
著者の塚澤さんは、日興証券やJPモルガン証券でトップアナリストとして勤務してきた方です。
本著では、現在のマーケットについてとても丁寧に分析されています。
お時間に余裕のある方は、ぜひ読んでみてください。
さて本著では「ちょっと難しくて避けて通りたい話題かもしれませんが」という前置きとともに、非常に重要な「イールドカーブ」について説明されています。
この「イールドカーブ」について、本著を参考に説明したいと思います。
例えば、お金の貸し借りで「今日借りて明日返す」といったような場合、金利はほとんど無視されると思います。
しかし、もしも「今日借りて10年後に返す」といったような場合、通常「金利がいくらか」という話になってくると思います。
両者の比較でも分かるように、「借りている期間が長いほど金利が高くなる」というのが普通です。
ちなみに、国家が借金をする際に発行するのが「国債」です。
国債の購入者は、国債を購入することによって「国家にお金を貸す」ということになりますが、そのかわり「利息(金利)」を受け取ることができます。
そして「国家にお金を貸す」期間については、2年や10年など様々な期間がありますが、期間が満期に達すれば、元金が国債の購入者に戻ってくる仕組みです。
ここで上記の2年と10年を比較した場合、「2年貸す」のと「10年貸す」の違いですから、当然「10年貸す」方が、金利(利回り)が高いのが普通です。
この事を踏まえた上で前述の「イールドカーブ」に話を戻しますと、「イールドカーブ」とは2年、10年など期間の異なる複数の国債における金利(利回り)の変化をグラフにしたもののことです。
そしてこの「イールドカーブ」に注目した時に、もしも2年と10年の金利(利回り)の差が「ゼロ」だったら、「おかしい」ことが分かると思います。
ましてや、「2年(貸す)」金利が「10年(貸す)」金利よりも高い「逆転状態」だったら、「非常におかしい」ことが分かると思います。
しかし実は近年、この「イールドカーブ」において、2年と10年の金利(利回り)の差が「ゼロ」になったり、「逆転状態」になったりということが度々起きているのです。
実際に、先週も米国債におけるイールドカーブが「逆転状態」になり、「米国債利回り低下、逆イールド発生」などと報じられていました。
報道では「10年国債」と「3カ月国債」の比較について触れられていましたが、10年国債の利回りが「2.234%」で、3カ月国債の利回りが「2.364%」と報じられていました。
まさに前述の「逆転状態」で、「非常におかしい」と言えると思います。
さらに近年はイールドカーブの逆転状態に限らず、先々週のコラムでもお伝えしたように、5年連続で需要が供給を上回っている銀(シルバー)が一方的に売られ、「金銀レシオ(金価格÷銀価格)」が21世紀になって一度も付けたことがない「89」という数値を付けるなど、「非常におかしい」ことが次々と起こっています。
しかし前述の塚澤さんは言います。
「おかしいことは長続きしない」と。
さらに塚澤さんは言います。
「リーマン・ショック前にもイールドカーブの逆転状態があった。しかしその後イールドカーブが正常化していき、やがてリーマン・ショックが起こった」と。
また金銀レシオについても、塚澤さんは以下のように言っています。
「80を超えてくると危機が起きる」
「過去20年間の平均は60程度だったから、かなり危険なニオイがする」
「今は完全に危険領域に入っている。今後はいつでも大きな〇〇ショックのような暴落が突然、次々と起こる可能性がある」
近年の相場については、「一部の人間の悪意とAIの合作である」と評価する人もいますが、私も全く同様の見方をしています。
国債については、2年以下の「短期金利」は政府(中央銀行)がコントロールしますが、10年などの「長期金利」は市場によって決まります。
だからこそ、「一部の人間の悪意とAIの合作」によって、イールドカーブの逆転状態といった「非常におかしい」ことが起こるのではないかと思っています。
しかし塚澤さんが言うように「おかしいことは長続きしない」と考えるべきで、私達個人投資家は、今後はリーマン・ショックのようなことが起きる可能性についてしっかりと意識しつつ、当面は忍耐強く取り組むことが大事ではないかと思います。
引き続き頑張りましょう。