地政学的リスク分析、政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社「ユーラシア・グループ」が発表した「2019年世界10大リスク」というものがあります。
10大リスクの中身は様々ですが、要点を一言で言いますと「世界の地政学的リスクがどんどん膨らんでいる」という事です。
一方で米金融大手ゴールドマン・サックスは、世界の保険会社に聞いた「2019年保険会社調査」というものを公表しました。
これによると、世界の保険会社の運用担当者の間でも「地政学的リスク」への関心が高まっているようです。
ところが、現在の相場はまるで「地政学的リスクなど存在しない」かのような小幅な値動きを続けており、専門家達からは「現在の相場は地政学的リスクに恐ろしく鈍感」といった声が上がっています。
しかし各種報道を見ていますと、世界には多くの地政学的リスクが存在していることが分かります。
例えば、アメリカとイランの緊張関係があります。
アメリカがイランの「革命防衛隊」をテロ組織として指定したかと思えば、イランもアメリカを「テロ支援国家」とみなす、アメリカ中央軍を「テロ組織」とみなすと宣言しました。
そのような中、アメリカは5月2日からイラン原油の完全禁輸を行うこととなりました。
一方でイランも、「もしホルムズ海峡の輸送を邪魔すれば同海峡を閉鎖する」と言っています。
さらにイランは、アメリカCIAのスパイ300人を逮捕しました。
そして前述のイランの「革命防衛隊」の新しい司令官は、「アメリカ、イスラエル、それらの連合国と同盟国を破壊する」と宣言しました。
またベネズエラの地政学的リスクも存在します。
以前のコラムでもお伝えしたことがありますが、現在のベネズエラは一国に2人の大統領となっており、グアイド暫定大統領派(アメリカ・EU)と、マドゥロ大統領派(ロシア・中国)という大国による代理戦争に発展するかもしれない、と言われる状態がなお続いています。
国内の物不足も深刻になっており、国民の1割が国外に出る事態となっている、と報道されています。
さらにメキシコ国境の問題もあります。
現在メキシコ国境には5000人規模の部隊が常駐していますが、メキシコ兵がアメリカ兵に「銃を向ける」出来事が起きたとして、トランプ大統領はメキシコ国境に武装兵士を派遣すると宣言しました。
そのような中、日本でも報じられていますが、フランスのパリでノートルダム大聖堂が火災に遭いました。
しかしこの火災にも「裏」があるという事で、専門家達の間では「計画的なテロ」の可能性を指摘する声が上がっているようです。
なぜならば、2015年頃から、フランス全土でカトリック教会の破壊と襲撃が続いており、凄まじい数になっているからです。
これらについては「百聞は一見に如かず」で、以下URLを見ていただければと思います。
http://www.yasunoeigo.com/frenchattack
要するに、今回のノートルダム大聖堂の火災も、相次ぐ一連の流れの中で起こったものではないかという事なのです。
では、これらカトリック教会の破壊と襲撃を行っている犯人が誰なのかというと、専門家達の間では「イスラム過激派ではないか?」と言われています。
そして先日起きたスリランカの同時多発テロは、死傷者が800人に達し、こちらもカトリック教会が標的にされたと報じられています。
フランス全土でカトリック教会の破壊と襲撃が続いていますが、スリランカのテロでもカトリック教会が標的にされたのです。
そしてこのテロ事件も、イスラム過激派の犯行ではないかと報道されています。
一方で、3月にニュージーランドのクライストチャーチのモスク(イスラム教礼拝所)で起きた銃乱射テロ事件は、イスラム系移民のことを「侵略者」と呼ぶ、白人至上主義者による犯行でした。
このような流れを踏まえ、現在の世界はイスラム過激派と白人至上主義者が広がっており、新たな脅威が広がっている、と言われています。
世界がイスラム過激派や白人至上主義者の争いに巻き込まれる可能性が高まっていると指摘されているのです。
さらに現在の世界は、米中貿易摩擦があり、アメリカ政治の混迷は深まっており、イギリスの合意なきEU離脱はなおリスクとなっています。
私達投資家は「地政学的リスクに恐ろしく鈍感」といったことが無いように、いざという時には「有事の円」「有事のドル」「有事の金」ということで、これらが急激に買われる可能性を意識して臨むのが良いと思います。
引き続き頑張りましょう。