相変わらず、動かない展開が続いています。
相場歴何十年という方でも、「これほど動かなかったケースは記憶にない」と言う程、動かない展開が続いています。
市場は何か「きっかけ」を待っている状態だと思います。
さて今回は「購買力平価説(こうばいりょくへいかせつ)」について考えてみたいと思います。
購買力平価説を簡単に説明しますと、「同じモノは同じ値段で買えるはずだ」という考え方の事です。
例えばアメリカで、1ドルで買える飲み物が日本では100円で買えるとすると、1ドルと100円では同じものが買えるので、為替レートは1ドル=100円が妥当だという考え方です。
そしてこの考え方は、仮に「1ドルと100円では同じものが買える」にも関わらず、現実の為替レートが「1ドル=112円」ならば、現実の為替レートは「1ドル=100円」に向かって修正されるのが妥当だろう、という考え方に繋がっていきます。
そのような「購買力平価説」において、分かりやすい例として有名なのがマクドナルドの「ビッグマック指数」です。
「ビッグマック指数」は約30年前からイギリスの経済誌「エコノミスト」が発表しているもので、世界の多くの国で購入できるマクドナルドのハンバーガー(ビッグマック)の価格を比較することで、「適正な」為替レートを算出しようというものです。
ビッグマックの価格には、肉や野菜、小麦などの原材料費、輸送費、作る人や売る人の人件費、店舗の賃貸料や光熱費など、様々な経済活動のコストが含まれます。
したがって、それらを比べて為替レートを算出することに意味がある、と考えられているのです。
例えば日本では今、ビッグマック1個の値段が390円しますが、アメリカでは5.58ドルとなっています。
現在の為替レートは1ドル=112円ですので、日本では390円で買えるビッグマックが、アメリカでは624円(5.58ドル)出さないと買えないという事です。
したがって、現在の1ドル=112円という為替レートは、ビッグマック指数を考慮すると、1ドル=69.89円(390円÷5.58ドル)に向かって修正されるのが妥当だろう、というように考えます。
最近のコラムで何度かお伝えした、ゴールドマン・サックスの「次の危機時には1ドル=60円」という予想も、背景にはこのような購買力平価説、ビッグマック指数が考慮されていると思われます。
ちなみに今日から始まる日米貿易協定交渉をめぐり、ムニューシン米財務長官は日本が円安ドル高を誘導して輸出を増やさないための「為替条項」導入を目指し、今後、圧力をかける姿勢を改めて鮮明にしました。
したがって上記の予想には、このような背景も考慮されていると思われます。
このような事を念頭に置いて、以下に最新の「ビッグマック指数」を、FXで馴染みのある国を中心に見ていきたいと思います。
4位:アメリカ (624円)
5位:カナダ (568円)
6位:ユーロ圏 (519円)
10位:オーストラリア (487円)
14位:ニュージーランド(469円)
15位:イギリス (455円)
23位:日本 (390円)
50位:南アフリカ (250円)
54位:トルコ (224円)
上記を見れば分かりますが、「スイスフラン」「ドル」「カナダドル」「ユーロ」「豪ドル」「ニュージーランドドル」「ポンド」は「円」よりも割高なので、これらの通貨を売って円を買う、つまりこれらの通貨に対しては円高に修正されると考えるのが「ビッグマック指数」から導かれる妥当な推論です。
一方で、「ランド」「トルコリラ」は「円」よりも割安なので、これらの通貨を買って円を売る、つまりこれらの通貨に対しては円安に修正されると考えるのが「ビッグマック指数」から導かれる妥当な推論です。
もちろん、相場が理屈通りに動くわけではありません。
不可解な値動きもありますし、上がったり、下がったりを繰り返します。
そして最近のように、ほとんど動かないケースもあります。
しかし、いざという時に慌てふためかない為にも、このような背景はきちんと押さえておく事が大事だと思います。
引き続き頑張りましょう。