以前のコラムでも紹介した事がありますが、2008年9月15日のリーマン・ショックから同年末にかけての為替は以下のように推移しました。
ドル円 105.48円 ⇒ 91.89円(13.59円高)
ユーロ円 151.37円 ⇒ 127.78円(23.59円高)
ポンド円 190.41円 ⇒ 133.56円(56.85円高)
豪ドル円 86.51円 ⇒ 65.38円(21.13円高)
ユーロドル 1.4340ドル⇒ 1.3904ドル(0.0436ドル高)
かなり大きく円高に推移した事が分かります。
そして先日、「次の危機時には1ドル=60円、市場関係者が予想」というニュースが報じられました。
これはゴールドマン・サックスのストラテジスト(投資戦略を考える専門家)による予想ですが、「ドル・円がどこまで行くと思うかと皆に尋ねた」結果としての予想だそうです。
リーマン・ショックの時もそうでしたが、やはり危機の際には円高に推移するのが「法則」のようになっています。
しかしこの1ヵ月、為替はまるで固定相場のようにほとんど動きませんでした。
決して楽観できるような世界情勢ではないと思いますが、「赤信号みんなで渡れば怖くない」からなのか、危機が表面化することなく現在に至っています。
さて金融経済用語に「炭鉱のカナリア」というものがあります。
これはその昔、炭鉱労働者がカナリアを籠にいれて坑道に入ったことに由来します。
カナリアは人間よりも先に有毒ガスを察知して鳴き声(さえずり)が止むことから、金融経済用語としては「何らかの危険が迫っていることを知らせてくれる前兆」を「炭鉱のカナリア」と言います。
そしてそんな「炭鉱のカナリア」が、現在は世界中の至る所で見られます。
以下に少し整理をしてみたいと思います。
【日本】
・安倍内閣の不支持率が支持率を上回った
・過去20年間の賃金上昇が先進国で唯一のマイナス
・昨年1年間で外国人投資家が日本株を約5兆7450億円の売り越し
【アメリカ】
・自動車ローンの支払い遅延が過去最高を更新中
・トランプ大統領が国家非常事態宣言を無効とする決議に対し、初の拒否権を発動
・3月22日のニューヨーク株式市場で、今年2番目の下げ幅を記録
【中国】
・自動車販売台数が8カ月連続で減少
・鉱工業生産が17年ぶりの低い伸び
【欧州】
・独アウディが約1兆9000億円のコスト削減を実施すると発表し、約1万3000人の人員削減となる見込み
・BMWの純利益が17%減少
・フォルクスワーゲンが7000人の人員削減を発表
・フランスのデモが19週目に入っており、先週は凱旋門で警官隊と激しく衝突
【イギリス】
・フランスのマクロン大統領が「イギリスの合意なき離脱に備えている」と発言
・ゴールドマン・サックスが「合意なき離脱」の確率を引き上げた
・大企業の「イギリス脱出」が相次いでいる
・11人の閣僚がメイ首相の辞任を望んでいると表明
・「合意なき離脱」による社会的混乱を政府は不安視しており、それに対応するため、一時的に戒厳令を敷き、治安維持目的で国内に軍部隊を展開させる可能性を否定せず
・反EU離脱デモに100万人集結
これらの情報は危険が迫っていることを知らせてくれる前兆、つまり「炭鉱のカナリア」だと思います。
問題は、世間で言われている金融危機が「いつ」起こるのかということですが、前述のように「赤信号みんなで渡れば怖くない」からなのか、為替はまるで固定相場のようにほとんど動いていないのが現状です。
したがって、金融危機が「いつ」起こるのか、とても読みづらくなっています。
しかし「次の危機時には1ドル=60円、市場関係者が予想」とあるように、次の金融危機時にはリーマン・ショックの時よりも激しい円高になる可能性があります。
私達個人投資家としては、次の金融危機を「ピンチはチャンス」としていくためにも、「危機の際には円高」としっかり意識して臨むのが良いと思います。
引き続き頑張りましょう。