今年も終わりが近づいてきていますが、ロイター通信が「ドル円の年間値幅が初の10円未満になりそうだ」と報じています。
しかしこれはドル円に限らずで、他の通貨も一昔前と比べると値動きがかなり小さくなっています。
同じような値段を狭いレンジで行ったり来たりしており、それがずっと続いています。
もう少し正確に言えば、「上がるのが不自然と思われる場面で上がり、下がるのが不自然と思われる場面で下がり、その後は長期の横ばい推移」といった展開で、悪質な感じさえする値動きとなっています。
そのような中、世間の「ヘッジファンド」は閉鎖数が設立数を3年連続で上回ったと報じられています。
原因は、ベテラン運用者ですら首を傾げるような相場展開になってきているからだという事のようです。
このように、「値動きの質」が一昔前と比べて変わってしまった最大の原因は、AI(人工知能)の台頭にあると思います。
米金融大手のゴールドマン・サックスでは、2000年当時に600人いたニューヨーク本社のトレーダーが現在は2人になっており、他はすべてAIに置き換わっています。
他の金融大手についても、似たり寄ったりとなっています。
確かにAIは人間と違って不眠不休で働きますし、その上、人件費の削減にも繋がります。
だからこそ各社で導入が進むのでしょうが、AIには致命的な「欠点」もあります。
例えば過去コラムでも紹介しましたが、「AIに東大を受験させ、東大に合格させよう」という「東ロボ」プロジェクトを実施している国立情報学研究所教授の新井氏によると、現在のAIには以下のような欠点があるそうです。
・国語力がどうしても伸びず、2011年にスタートした「東ロボ」プロジェクトは、未だに東大合格が遥か遠い
・囲碁の世界チャンピオンに勝つ一方で、近所のお遣いにすら行けない
・囲碁の世界チャンピオンに勝つ一方で、2歳未満どころかカラスが持つ能力すら持てる見込みがない
・ぎっしり詰め込まれた冷蔵庫の奥からバターを取り出すことすらできない
さらに先日、AIの最先端を走ると言われているアメリカのグーグル社のAI責任者が「現在のAIはとても頭が悪い」と発言しました。
その理由も前述の新井氏が述べている「欠点」と似通っていて、「特定のことをやるのは非常に得意だが、創造的思考ができない」との事でした。
このように、グーグル社のAI責任者が「現在のAIはとても頭が悪い」と発言したところで、今度は「グーグルで『バカ(idiot)』と検索すると、画像検索の結果にトランプ大統領の画像が出てくる」という問題が浮上してきており、グーグルCEOが議会で説明を求められる事態となりました。
CEOの回答は「AIがそうさせている」という事でした。
これらの事から分かるように、現在のAIは決して完璧とは言えず、むしろ多くの「欠点」を抱えており、そのようなAIが相場上で台頭してきているからこそ、「値動きの質」が一昔前と比べて変わってしまったのだと思います。
「では私達人間はどうするべきか?」といった時に、これも過去コラムで紹介しましたが、金融情報学が専門で東京大学大学院の和泉教授は「何かおかしいぞ」「そろそろ何かが起こるのではないか」といったような人間的な感覚こそを大事にすべきだ、と言います。
そしてそのような人間的な感覚を培うためにも、普段から複雑な社会の動きや変化を把握することに努めるべきだ、と言います。
つまり私達投資家は、人間的な感覚を大事にしつつ、「耐えて勝つ」「負けなければ勝つ」というスタンスで臨む事がAIに対する現実的な対抗策だと思います。
さらに「人の行く裏に道あり花の山」で、AIの現状が欠陥だらけだからこそ、「人間的な感覚を大事にする」と決意する事が勝利を引き寄せることになると思います。
そのような中、これは「人間」による予想になりますが、先日デンマークの投資銀行サクソバンクが「投資家に対する警告」の意味を込めて、以下のような事を述べました。
・トランプ大統領がFRBのパウエル議長を解任する
・イギリスでは労働党のコービン党首が首相になり、1ポンド=1ドルになる
・ドイツが景気後退に陥り、EUが「債務の帳消し」を発表する
上記の予想は、決して荒唐無稽(こうとうむけい)ではない予想だと思います。
それなりに根拠のある話であるため、意識しておいた方がいい予想だと思います。
そしてこれらの予想やその背景を踏まえますと、この先は円高の相場観で臨んだ方が良いと思います。
引き続き、頑張っていきましょう。