いよいよ米中間選挙です。
日本経済新聞は「米国の中間選挙後は円安が進むとの見方が日増しに強まっている」と報じていますが、私は「一時的には円安が進むかもしれないけれど、いつ来てもおかしくない激しい円高を想定しておくべきだ」と思っています。
「有事の円買い」と言われますが、世界を見渡してみますと、激しい円高がいつ来てもおかしくない状況にあるように思えるからです。
例えば中国については、以下のような事が報じられています。
・米格付大手S&Pグローバル・レーティングスが、中国地方政府の「隠れ債務」規模が40兆元(約648兆円)に達したとの調査報告を発表した。S&Pは中国の債務問題について、「巨大な信用リスクを伴っている」と警鐘を鳴らした。
・中国株の下げは世界で最も大きくなっており、時価総額は今年1月から3兆ドル(約336兆円)余り減少。フランス株式市場の時価総額を上回る規模となっている。
そして欧州については、以下のような事が報じられています。
・イタリア予算案を巡り、同国とEUの対立が深まっている。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、イタリアの国債格付けを投資適格水準として最低の「Baa3」に1段階引き下げた。あと1段階下がれば投機的水準となる。
・欧州で高い政治力を発揮してきたアンゲラ・メルケル独首相が2021年の任期満了をもって退任する意向を表明したことで、近年のポピュリスト(反エリート主義者、大衆主義者)の台頭を背景に欧州連合(EU)が機能不全に陥る恐れがあると、外交関係者や政治アナリストらが警告している。
・ドイツ銀行の株価が急落しており、ブルームバーグが記録を開始した1992年以降の最安値に沈んでいる。
・トランプ大統領の元側近、バノン元首席戦略官が反EU結集へ奔走している。
一方で日米の間においては、以下のような事が報じられています。
・トランプ大統領が日米の一方的な貿易状況を収支トントンまで持っていくと、ツイッターで発言。
・トランプ大統領が中西部・インディアナ州の農業団体で演説し、日本との貿易について「我々はヤギ1匹だが、日本は何百万台の自動車を輸出している」と不満を示した。その上で大統領は日本が市場を開放しない場合は日本からの輸入車に20%の関税をかけると警告した。
また世界全体を見ますと、「世界債務が1京9000兆円になっており、リーマン・ショック時から5割増えている」とIMF(国際通貨基金)が警告を発しています。
上記のような背景を考えた時、そこから導かれるのは「円高」です。
さらに中東では、サウジアラビアの記者殺害事件が尾を引いており、地政学リスクが高まっています。
一方で、米中貿易戦争についても終わりが見えず、トランプ大統領が中国に対し、まだ発動していない「第4弾」の追加関税措置の発動を表明する可能性があると報じられています。
またトランプ大統領が側近に、対中貿易協定の原案を作らせているとの報道も出て、米中が貿易で仲直りするとの見通しを材料に日米中の株価が先週は急騰しましたが、その後、トランプ大統領の貿易担当側近のクドロー氏が、報道を否定するとともに、対中貿易交渉の先行きはむしろ悪化していると表明しています。
これらも円高要因になります。
米中間選挙については様々な予想が出ていますが、どのような結果になろうとも、トランプ大統領は2年後の大統領選での再選に向けて全力で公約の実現に動くと思います。
したがって、むしろ中間選挙後の方がトランプ大統領の影響力がより一層強くなってくると思います。
特に前述のように「日米の一方的な貿易状況を収支トントンまで持っていく」となると、激しい円高にならないことには決着がつかないでしょう。
「激しい円高」として、将来的には以下の価格出現があり得るかもしれないという事を意識しておきたいと思います。
ドル円: 75.33円(2011年10月)
ユーロ円: 94.11円(2012年7月)
ポンド円: 116.83円(2011年9月)
豪ドル円: 55.04円(2008年10月)
NZD円: 44.20円(2009年2月)
カナダドル円: 68.35円(2009年1月)
スイスフラン円:74.70円(2008年12月)
十分に注意を払って取り組んでいきましょう。