NHK「週刊ニュース深読み」という番組があります。
毎週土曜日の朝8時45分から9時30分の放送で、その週の気になるニュースをテーマにした番組です。
先日1月21日(土)のテーマは「トランプ大統領就任」でした。
私が懇意にしている方が、先日NHKからこの番組への出演を打診されましたが、今回は本人の予定が合わずに断る事となりました。
しかし、もし本人の番組出演がOKだった場合に、NHKが聞きたかった事というのが「トランプ政権はどんな政策を実施して、アメリカがどうなっていくと思うか? 日本や世界にどんな影響があると思うか?」だったそうです。
多くの人々にとって、また多くの投資家達にとっても気になるテーマだと思います。
そこで、今週のコラムも「トランプ政権はどんな政策を実施して、アメリカがどうなっていくと思うか? 日本や世界にどんな影響があると思うか?」をテーマにしたいと思います。
トランプ大統領がこれまでに語ってきた主張は、TPPの離脱、すべての貿易交渉を見直す、国内産業の保護、移民に対する規制・強制送還、メキシコとの国境に壁を作る、インフラ投資、高額所得者・法人に対する減税、軍事力強化、海外派遣の見直しといったようなところです。
米国人の雇用を取り戻す事についても語っていましたし、テロ根絶についても語っていました。
そして、昨年の大統領選挙勝利演説でも、今回の就任演説でも国民の結束を呼びかけていました。
インフラ投資に関しては、10年間で1兆ドルを越える大規模な計画で、交通、上下水道、電力通信網、テレコム、空港などの整備を包括的に実施するというものです。
また、インフラに関しては、アメリカではすでに相当程度が民営化されていますが、トランプ政権はその範囲をさらに拡大し、多くのインフラを民営化するとしています。
そして国内外の企業を入札で呼び込み、インフラ建設に当たらせます。
企業はインフラの建設資金が必要になりますが、そうした資金の調達先として、米政府は米国内の社債市場を利用することができるように整備を進め、企業の社債販売による資金調達を促進するとしています。
トランプ氏は財務長官に元ゴールドマン・サックス幹部のムニューチン氏を指名しました。
そういうわけで、巨額な公共投資を軸に景気回復を図り、トランプ大統領任期中のアメリカはバブルになる可能性があると私は思います。
もしかしたら、日本の新幹線売り込みも浮上するかもしれません。
日本や世界の経済にとって決して悪くはない、むしろ明るい、と私は思っています。
もちろん、アメリカ経済の未来も明るいと思います。
ただし、ひとつ懸念があります。
巨額な財政出動を伴った公共投資の増大は共和党の政策的に見合わないので、実際にどこまで実現できるのかという点です。
そして、肝心の為替ですが、以前のコラムで語ったように、トランプ大統領は何かとレーガン元大統領と比較されています。
多くの政策が重なるためです。
そのレーガン政権の時の為替がどうだったかと言いますと、大統領に選出された1980年の年間平均レートが「1ドル=226.74円」で、大統領就任の1981年の年間平均レートが「1ドル=220.53円」です。
つまり、あまり変化はなかったわけですが、結果的には円高ドル安になったという事です。
報道でも知られるように、トランプ大統領はドル安志向です。
一方で、財務長官のムニューチン氏は「強いドルは長期的に重要」「トランプ大統領がドルについて発言した際、長期を意識した発言とは意図していなかった」と述べています。
この発言に対して、専門家達は「もう少し見極めが必要。これだけの発言では判断がつかない」との見解です。
なかなか判断の難しいところですが、レーガン政権の時を参考にしますと、今後は緩やかに円高ドル安となっていくかもしれません。
もちろん、1980年代当時と今とでは、世界を取り巻く環境は大きく異なっています。
したがって、決め打ちするのは賢明ではありませんが、ひとつ皆さんの参考にしていただけたら幸いです。