米金融大手のゴールドマン・サックスがAI(人工知能)を使って、サッカーワールドカップ・ロシア大会の予想を出しました。
その予想を出すにあたり、なんと20万もの統計モデルを使い、100万回ものシミュレーションを行ったそうです。
このような膨大なシミュレーションができるのも、AIを使うからこそであって、人間にはとても真似できるものではありません。
さてゴールドマン・サックスがAIを使って出した予想ですが、以下のようになっています。
・ブラジルとドイツが決勝を行い、ブラジルが優勝する
・フランスは準決勝でブラジルに敗れる
・イングランドは準々決勝でドイツに敗れる
・スペインとアルゼンチンも準々決勝で敗退する
・ロシアは開催国だが、グループリーグを突破できない
・サウジアラビアがグループリーグ(Aグループ)を突破する
上記予想には大いに注目です。
なぜならば、最新AIの「実力を測る物差し」になるからです。
ところが上記AIによる予想は、開始早々から雲行きが怪しくなっています。
と言いますのも、「ロシアがグループリーグを突破できない」「サウジアラビアがグループリーグを突破する」との上記予想に対して、「ロシアが開幕戦で歴史的大勝 サウジに5-0」という結果になったからです。
さらに、「連覇狙うドイツがメキシコに敗れる」「スイスの堅守敗れず ブラジルはドロー発進」という結果にもなったからです。
AIは決して「神」ではないのです。
サッカーの予想だって誤りますし、今朝大阪で起きた震度6弱の地震を予期できたわけでもありません。
AIはあくまでAIで、決して神ではないのです。
ところが相場の世界においては、そのようなAIの存在感が年々大きくなっており、現在世界中の金融機関で人間のトレーダー達が減っていき、代わりにAIが中心となって売買を行うようになっています。
そして今の相場の「問題点」は、まさにこのAIが中心となって売買を行う点にあるのです。
AIの強みは前述のように「20万もの統計モデルを使い、100万回ものシミュレーションを行う」事や不眠不休で売買を行う事ができる、といったところです。
しかしAIには決定的な弱点があると言われ、それは国語力だと言われています。
「AIに東大を受験させ、東大に合格させよう」という「東ロボ」プロジェクトというものがあるのですが、このプロジェクトを実施しているNII(国立情報学研究所)のセンター長の新井氏によると、「AIが文章の意味を理解することは不可能に近い」「どうやっても国語の点数が伸びない」そうで、2011年にスタートした「東ロボ」プロジェクトは、未だに東大合格が遥か遠くだそうです。
つまりこの事を相場の世界で考えてみますと、世界経済や世界情勢を理解しない「機械」が売買をひたすら繰り返しているという事を意味します。
よく言われるのが「本当にAIが人間よりも優れているのなら、相場の値動きはもっと合理的になるはず」という事ですが、実際は「訳が分からない」「不可解だ」という声ばかり上っています。
国語力のない「機械」が相場を主導しているからこそ、「訳が分からない」「不可解だ」という事になっているのだと思います。
ある意味「20万もの統計モデルを使い、100万回ものシミュレーションを行った」にも関わらず、「ロシアが開幕戦で歴史的大勝 サウジに5-0」や「連覇狙うドイツがメキシコに敗れる」「スイスの堅守敗れず ブラジルはドロー発進」という結果になった事についても同様の問題だと思います。
AIには、どこか欠陥があると思われます。
さらに過去のコラムでもお伝えしましたが、「生身のトレーダーにAIが負けた2月-株式急落で月間ベース過去最悪」(ブルームバーグ)という事で、AIが人間に負ける事だってあります。
これらを総合して考えますと、やはり人間のトレーダーは人間らしさや国語力を持って臨むべきで、つまり世界経済や世界情勢にも興味を持って臨むべきではないかと思います。
しかしその道中では、AIによって「訳が分からない」「不可解だ」という展開になる事が多々あり、そのような時は「負けなければ勝つ」等の「信念」がどうしても必要になってきます。
一方で大きな目で見れば、AIも日進月歩で進化すると考えられます。
そうすれば、将来的には前述のような「本当にAIが人間よりも優れているのなら、相場の値動きはもっと合理的になるはず」と言われる事も減るでしょうし、もっと合理的だと言われるような値動きが増えてくるはずです。
そのような意味でも、今回のサッカーワールドカップ・ロシア大会のAI予想がどうなるのかは、大いに注目する価値があります。
ぜひ注目をしてみましょう。