先週は要人発言が相次ぎ、その度に相場が揺れ動きました。
以下に整理をしてみます。
【ムニューシン米財務長官】
・ドル安は米国にとって良いことだ。貿易に関わるからだ。
・(上記コメントで)ドルを動かすつもりはなかった。
【トランプ米大統領】
・ドルの価値は国の経済力による。
・米国経済は力強く絶好調だから、ドルはどんどん強くなるだろう。
【ドラギECB(欧州中央銀行)総裁】
・米国の為替の口先介入に懸念を表明する。
・年内利上げの可能性は極めて小さく、ユーロは誰かのコメントのせいで上昇した。
【黒田日銀総裁】
・為替はファンダメンタルズを反映した安定推移が一番だ。
さて先週は、上記のような要人発言が出る度に相場が動いたのですが、いくつかの気になる点があります。
まずアメリカの政府要人の間では、為替に関する発言は財務長官と大統領のみが行うべきであるとされています。
ところが、そのうち一方が「ドル安が良い」と言い、もう一方が「ドルが強くなる」と言うのでは、「いったいどっちなのだ?」と市場は戸惑う事になります。
ドラギECB総裁のコメントに関しては、現在のユーロ高が不自然だと考えており、ユーロ高を警戒しているという事が分かります。
これは過去のコメントを勘案しても、そのように理解できます。
黒田日銀総裁のコメントに関しては、「為替はファンダメンタルズを反映した安定推移が一番だ」の発言の裏側には「現在はそうなっていない」という思いがあるように感じます。
そして、「日本は2%のインフレ目標にようやく近い状況にある」の発言は、現在の金融緩和策がようやく正常化に向かうという連想に繋がるので、市場は円高での反応となりました。
これらの要人発言から「本来あるべき相場の姿」を考えてみますと、ユーロは今よりも安く、円は今よりも高く、という事になります。
ところが、この一年近くは真逆の相場展開が続いていたわけですから、ドラギECB総裁の言う「誰かのコメントのせい」かもしれませんし、「おかしな」相場展開だったと言えます。
一方で、独歩安を続けてきたのが「ドル」です。
昔、本コラム等でも何度か説明させていただいたことがありますが、アメリカにはメドレー・グローバル・アドバイザーズという調査会社があります。
この調査会社は米政権内部やFRB(米連邦準備制度理事会)と密接に繋がっていると言われ、資金力のある機関投資家はメドレー社に膨大な金額を支払って、このレポートを購入しています。
したがって、メドレー社をめぐるインサイダー疑惑は昔から度々あるのですが、米政権内部と繋がりが強いからなのか、大きな問題にならずに現在に至っています。
しかし、独歩安を続けるドルについて「どう考えても、ここまで継続的にドルが売られるのはおかしい」「今回のムニューシン米財務長官のドル安発言についても、あらかじめ発言内容を知っていた連中がいるのではないか?」という疑惑の声がプロトレーダー達を中心にあがっています。
前述のメドレー社のレポートが関係するのかどうか分かりませんが、現状の値動きについて「インサイダー疑惑」の声があがっているのは確かです。
このような相次ぐ要人発言で相場が揺れ動いた中、世間では仮想通貨取引所コインチェックで、仮想通貨NEM(ネム)約580億円分が不正アクセスで流出したと騒ぎになっています。
この事件についても、どうやら「裏」があるのではないかと言われています。
今から4年前には仮想通貨取引所マウントゴックスでも同様の事件がありましたが、元社長のマルク・カルプレス氏が何者かにハッキングを依頼し、消失したビットコインをその機に乗じて自分のものにしていたのではないかという疑惑が浮上しました。
今回の事件についても「わざとセキュリティ対策をとっていなかったのではないか?」という意見もあるようで、自作自演の疑いを抱いている人達もいるようです。
一方で、世間に仮想通貨ブームを仕掛けているのはアメリカのウォール街だと言われています。
日本の仮想通貨取引所大手ビットフライヤーは「相場荒らしのビットフライヤー」とも言われているそうですが、経営陣にはゴールドマン・サックス出身者が何人もいます。
一部の海外メディアでは、ビットフライヤーが相場荒らしをしていると指摘しているようですが、今回の事件もそれに関連した結果として起こったものではないかとみている人達もいるようです。
いずれにせよ、「綺麗な世界」から程遠いのが「相場の世界」で、昨今は特に不可解な事件等が多発しています。
このような世界で生き残っていくには、一獲千金を狙うのではなく、徹底したリスク管理で「負けない事」を意識する事が重要だと思います。
また、やや専門的な話になりますが、現在はジャンク債と米国債の金利差である「リスクプレミアム」がリーマンショック前と同水準になっています。
いつ何が起きてもおかしくない状況ですので、十分注意して臨みましょう。