「分かったつもり」と「分かった」は違う、という事をテーマに今回はお話をしたいと思います。
この事について言及した素晴らしい書籍があります。
「残酷すぎる成功法則」という本で、ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルで何度も記事が引用されている「米ブロガー」のデビュー作であり、2017年上半期に米アマゾンが選ぶ「ベストビジネス書」の1冊にも選定された本です。
上記書籍の中の文章を以下に紹介します。
【たとえばある分野に関して素人の人びとは、その世界でどんな技が簡単で、どんな技が難しいのか適切に評価する知識を持ち合わせない。だからプロのマジシャンは私たちと違うトリックに喝采を送り、コメディアンは私たちが笑うのとは別のジョークで笑う。彼らは専門家ならではの洞察力で、それらの芸を仕上げるのがどれほど難しいかを見抜くからだ。
「ダニング=クルーガー効果」とは、経験が浅い者ほど、ものごとがどれほど困難なのかを評価する尺度を持たないので自信満々でいられる、という奇妙な現象のことをいう。きっと誰でも経験があるはずだ。たとえば、誰かがヨガのポーズを取っているのを見ると簡単そうに思えるが、いざやってみると思っていた以上に難しかったりする。絵画を見ながら「私でも描けそう」とつぶやいたりするのも同じことだ。】
書籍は400ページ弱あるのですが、私の中で最も印象に残ったのが上記の文章でした。
といいますのも、私はこれまでに多くの投資家(トレーダー)達を見てきたからです。
素人から「プロ中のプロ」と言われる人まで、実に多くの投資家達を見てきました。
その中には、ビギナーズラックで上手くいき、自信満々になっていたところで大損をした素人の投資家もいましたし、「プロ中のプロ」と言われた人でも大損をしたというケースもありました。
そういう意味でも、相場の世界においても「分かったつもり」と「分かった」は違う、という事が非常に深いテーマだと思われるのです。
私は20年弱この世界に携わっていますが、知識というか「知恵」として皆さんにお伝えしたいのが7月のコラムでも紹介した清武英利氏の「プライベントバンカー」という書籍の中の以下の文章になります。
相場の真実が上手く語られていると思います。
【「相場の世界はひどいんだよね」と彼は言う。
「本当に見てられないくらいひどい。青山にマンション買ったりしてた奴なんか、今はもう乞食のようになっちゃって。みんな相場でやられていなくなった」
本心を言えば、マーケットは好きではない。胃が痛むのだ。若いころと違って、あえて臆病に運用するのが彼のスタイルだ。男気のあるディーラーというのは結局、死ぬのだという。】
要するに、「相場は酷い世界だと認識する」「あえて臆病に運用する」というのが、相場の世界で生き残っていく「知恵」であるという事です。
さて、そんな中で最近「やっぱり凄いな」と感心した出来事がありました。
FANG・MANTという言葉があります。
フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル、マイクロソフト、アップル、エヌビディア、テスラといったIT巨大企業8社を指す言葉です。
現在、全世界の株式時価総額に占めるドイツやフランスの割合が3%ちょっとであるのに対し、FANG-MANTの時価総額は4%を占めています。
つまり、現在の世界はドイツ経済やフランス経済よりもFANG・MANT がどうなるか、の方が世界経済に与えるインパクトが大きくなっているのです。
まさに、FANG・MANTは世界的な巨大企業なのです。
前述の「凄いな」と思った出来事とは、そんなFANG-MANTで要職を務めた方と縁があって、私は個人的に親しくさせていただいているのですが、その方が最近こう言っていたのです。
『改めてもう一回「エンダウメント投資戦略」を読んでみたけど、いい本だね。確かに「時間を味方につける」というのが最も賢い戦略のように思う』
これを聞いて、私は「やっぱり凄いな」と感心したのです。
なぜなら私が過去に薦め、一度読んだ事のある「エンダウメント投資戦略」をもう一回読んだとの事だからです。
「分かったつもり」と「分かった」は違う、と深く認識しているからこそ、もう一回読んだとの事でした。
「エンダウメント投資戦略」については、これまでに本コラムでも何度か紹介をさせていただきました。
「米国屈指の名門ハーバード大学やイェール大学は、実は世界でもっとも先進的な機関投資家だった!」という帯で販売されている書籍で、「時間を味方につける」事の重要性が説かれています。
「負けなければ勝つ」が相場の真理だという事なのです。
だからこその「本手法」という事なのです。
今回は、「分かったつもり」と「分かった」は違うという事を皆さんにお伝えしたかったわけですが、皆さんにはぜひ「分かった」側になってほしいと思っています。
そのためには、「もう一回読む」などの復習が非常に重要だと思います。
過去の本コラムについても、ぜひ「もう一回読む」を実行していただけたら幸いです。