先週のコラムでは、AI(人工知能)の話に関連して「生身の人間に可能な複雑で将来を見越した分析」という事について触れました。
そのような中、先月はまさに世界中で「複雑で将来を見越した分析」が必要とされるような出来事が相次ぎました。
このような出来事の複雑さを整理し、全体像の把握に努め、将来起こり得る可能性について予想を立てる事は投資家にとっても重要な事です。
したがって、今回のコラムでは先月報じられた「世界のニュース」について整理をしてみたいと思います。
・3月1日
トランプ米大統領が鉄鋼とアルミニウムについて、関税を課すと発表
※その後、EU、オーストラリア、カナダ、韓国などを関税の課税から外す
・3月4日
イギリスでロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパル氏と娘のユリアさんが何者かに毒を盛られる殺人未遂事件が起こった
・3月8日
イギリス政府は(上記の)ロシア元スパイ毒殺未遂事件について、ロシアの仕業であるとして、ロシアを非難
・3月13日
トランプ米大統領がティラーソン国務長官を解任し、後任にポンペオ氏を指名
※ポンペオ氏は「北朝鮮は政権転覆されるべきだ、先制攻撃すべきだ」と述べている
・3月13日
ロシアのゲラシモフ参謀総長は、もしシリアでロシア軍人が犠牲になれば、アメリカのミサイルと空母に対して即刻報復すると明言
※シリア内戦問題については中東の覇権、天然ガスのヨーロッパ供給、天然ガスを運ぶパイプライン建設を巡って、ロシア・イランVSアメリカといった構図が背景にある
・3月15日
イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスがロシア元スパイ毒殺未遂事件で共同声明を出し、ロシアを非難
・3月16日
アメリカが「台湾旅行法」を成立させ、中国が猛反発
※台湾旅行法は「アメリカと台湾の政府高官、全官僚の相互訪問を奨励する」もので、台湾を「中国の不可分の領土である」と主張する中国は猛反発
・3月22日
トランプ米大統領がマクマスター安保担当補佐官を解任し、後任にボルトン氏を指名
※ボルトン氏はイランと北朝鮮に対して「軍事力の行使」を主張している
・3月23日
イギリス政府がロシア外交官23人の国外退去を要請
・3月23日
アメリカが中国製品5.3兆円に知財制裁関税を発表
・3月23日
中国が米国債の購入減額を仄めかす
・3月26日
中国がアメリカへの報復として米化学品をダンピング(不当に安い価格で商品を販売すること)調査
・3月26日
北朝鮮の金正恩氏が初の訪中
3月27日
中国が南シナ海で大規模な軍事演習を行っていることが衛星画像で確認される
3月28日
ロシアのモロゾフ議員は「ロシア、中国は今後、北朝鮮への様々な支援に乗り出すだろう」と述べた
・3月28日
欧米を中心とした26カ国がロシア外交官140人超を国外追放
・3月29日
ロシアが対抗措置として米外交官60人を国外追放
さて時系列で簡単に整理をしてみましたが、これらのニュースから読み取れる事や予想される事はどのような事なのでしょうか?
専門家の間では以下のような事が言われています。
・欧米諸国とロシア・中国・イランなどが対立する新たな冷戦時代に突入した
・北朝鮮への影響力を誇示し、アメリカをけん制する「北朝鮮カード」を取り戻したい中国と、米朝首脳会談を前に後ろ盾がほしい北朝鮮の思惑が一致した中朝首脳会談となった
・中国がアメリカへの報復として、保有している巨額の米国債を売り始める可能性がある
このような中、日本だけが「蚊帳の外」との報道が目立っています。
しかし日本は、欧米諸国の対ロシア制裁の環には加わっていませんし、北方領土問題を除いてはロシアとの関係も悪くありません。
中国とも尖閣問題がありますが、中国の推進する「一帯一路政策」に日本は協力姿勢を示したところであって、その点でも中国との関係も悪くありません。
イランとは昔から関係は良好ですし、唯一、円建てで原油取引もできています。
そしてもちろん、日本は欧米諸国との関係も良好です。
このように考えていきますと、この「新たな冷戦時代」と言われる中での日本の立場は決して悪くはなく、中長期的な相場観点でいえば「円」が買われやすい環境にある、と言えるのではないかと思います。
一方で、森友問題から連想される「アベノミクスの後退」についてですが、なんと北朝鮮でもこの問題は報じられており、それだけ海外からも注目されているようです。
安倍昭恵氏については森友学園だけではなく、55件もの名誉職に就いていたそうですが、森友学園以外でも「同様の問題がある」といった噂があり、「渋谷の一等地700坪無償払い下げ疑惑」といったものもあります。
このような疑惑が再び大きく取り上げられると、アベノミクスの後退はさらに加速するでしょう。
アベノミクスの後退は株安と円高を招きますので、そういう意味でも、中長期的な相場観点でいえば「円」が買われやすい環境にある、と言えるのではないかと思います。
一部で「再びドル円が100円を割るのではないか」という予想も出てきていますが、十分あり得る話ではないかと思います。
今後も各種報道に注意を払いながら臨みましょう。