「メンバー全員で数億円の損だよ、一晩で・・・」
先日、ある人から上記のような事を聞きました。
これは何かと言うと、M&A(企業の合併・買収)絡みでの為替の話です。
例えば最近のM&Aでしたら、武田薬品工業の製薬大手シャイアーの買収、富士フィルムのゼロックスの買収、リクルートのグラスドアの買収、東レのテンカーテの買収、日本電産のエンブラコの買収・・・などがあります。
日本企業が海外企業を買収する時、円を売ってドルを買う、円を売ってユーロを買う、円を売ってポンドを買う・・・といった形で、外貨を調達するための為替取引が発生します。
ここで注目を集めるのが「いつ、どの程度の金額が為替市場を経由するのか」という点です。
この点が「前もって」分かれば、インサイダー取引に近い取引ができる、つまり儲かるだろうという話です。
上記の「メンバー全員で数億円の損だよ、一晩で・・・」というのは、M&Aに絡んで、「いつ、どの程度の金額が為替市場を経由するのか」という点についてのかなり手堅い情報を基に、メンバー全員で一斉に「買い」を仕掛けたものの、翌朝になったら大損していた・・・という話なのです。
私はこの話を聞いた時、「M&Aのみで為替は動くにあらず、なのに・・・」と思いました。
ちなみに株と違い、為替取引にはインサイダー規制がありません。
これはおそらく、株式市場と比較しても為替市場の規模の方が遥かに大きいからだと思います。
したがって、もしも「とっておきの情報」を得たとしても、必ずしも利益を上げる事ができるかどうかを証明できないからだと思います。
しかし「インサイダー規制」は無いものの、2011年にはスイス国立銀行(中央銀行、SNB)のヒルデブラント総裁の妻だったカシュア夫人が50万ドルのドル買いを行い、インサイダー取引だと疑われた事がありました。
結局この問題は、ヒルデブラント総裁の辞任という形で幕を引く事になりました。
他にも、調査会社「メドレー・グローバル・アドバイザーズ」による「インサイダー取引だと疑われる案件」は多々あります。
過去コラムでも紹介しましたが、この調査会社は米政権内部やFRB(米連邦準備制度理事会)と密接に繋がっていると言われ、資金力のある機関投資家はメドレー社に膨大な金額を支払って、このレポートを購入しているという背景があるのです。
もちろんレポートを購入するのは、そうした方が有利だから、という事です。
しかしメドレー社自体が米政権内部と繋がりが強いからだと思いますが、大きな問題にはならずに現在に至っています。
とはいえ、昨年は米リッチモンド連銀総裁がメドレー社に金融政策に関する情報漏洩をした疑いを持たれ、辞任するという事もありました。
結局、私が皆さんにお伝えしたかった事は、「相場の世界はフェアではないですよ」という事なのです。
そしてフェアではないからこそ、「カモになってはいけない」という事なのです。
さらにカモにならない為にも、「負けなければ勝つ」を徹底しましょう、という事なのです。
近年は、これに加えてAI(人工知能)も無視できない存在となっていますが、AIによるフェイクニュース(偽ニュース)の問題も深刻です。
これについては「百聞は一見に如かず」です。
お時間のある方は、以下URLで動画を見るか、YouTubeで「You Won't Believe What Obama Says In This Video!」と検索して動画をご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=cQ54GDm1eL0
上記動画のオバマ元大統領は、「そっくりさん」でもなければ「本人」でもありません。
なんとAI技術を駆使して制作された「本物にしか見えないCG」です。
言われなければ分からないレベルですし、言われても分からないレベルです。
「騙されるな」という方が無理かもしれません。
以前のコラムでもお伝えしましたが、AIがフェイクニュースを作成するのであれば、それらを見抜くのもAIにさせるという事で、現在はAI対AIの戦いになってきつつあり、一言で言うと「訳が分からなくなってきている」のです。
このような全体像を把握した上で、私達個人投資家は勝たなければならないのです。
そのためには、前述のように「フェアではないからこそ、カモになってはいけない」「カモにならない為にも、負けなければ勝つ、を徹底しましょう」という事なのです。
根気強さを持って、頑張りましょう。