今回は、皆さんに一読をオススメしたい書籍について、そして欧州系某投資銀行のレポートについて触れたいと思います。
まずは書籍ですが、清武英利氏の「プライベートバンカー」という書籍になります。
シンガポールの日本人富裕層を相手にするプライベートバンカーの話で、実話となっています。
本著を読みますと、「マネー」の世界についての様々な事を感じ取っていただけるかと思います。
以下に、本著の一部を抜粋します。
「15億円も生命保険につぎ込むことはできませんよ。そんなおカネなんてありませんもの」
「大丈夫です。お客様にはまず5億円をご用意いただきます。残り10億円は当行で融資をさせていただきます。とすると、5億円を出しただけで亡くなった時には50億円の死亡保障金を得られます。そうなると、10億円の融資分を返済しても、35億円が手元に残る計算になります」
シンガポールのプライベートバンクの中には、相続税逃れで移住しようという資産家に警告するところも出てきた。外資系のバンカーが言う。
「相続対策のために妻と子供でシンガポールに移住したい、という金持ちが来るんです。そういう方に私は『我慢できませんよ』と言います。『オフショアブームに乗るのはいいが、税金ゼロのために人生後半の貴重な5年間を何もしないで毎日ぼーっとしていられるんですか』と。国税庁が5年ルールを7年、いや10年ルールに改正してしまうリスクもある」
「相場の世界はひどいんだよね」と彼は言う。
「本当に見てられないくらいひどい。青山にマンション買ったりしてた奴なんか、今はもう乞食のようになっちゃって。みんな相場でやられていなくなった」
本心を言えば、マーケットは好きではない。胃が痛むのだ。若いころと違って、あえて臆病に運用するのが彼のスタイルだ。男気のあるディーラーというのは結局、死ぬのだという。
電話は、どうもシンガポール警察の指示によるものらしい。その趣旨は、用心をしてほしい、ということに尽きた。
「何があったんですか?」
肝心な質問には答えない。そして、「とにかく避難してください。安全なところに」
さて、上記の抜粋は、「こういう世界があります」「こういう話を知っておいてほしい」という事で、私が皆さんにお伝えしたかった事でもあります。
上記に「青山にマンション買ったりしてた奴なんか、今はもう乞食のようになっちゃって」という記述がありますが、この世の中は「栄枯盛衰」がたくさんあります。
私もこれまでに、たくさんの「栄枯盛衰」を見てきました。
この事について、私が皆さんにお伝えしたいのが、観相学の大家であった水野南北(みずのなんぼく)が発見した「運の法則」です。
水野南北は、人相、手相、骨相、墓相、家相、ありとあらゆる相学、観相学を究め、南北相法というものを完成させた人物です。
水野南北は「人相、手相、家相も良いのに運が落ちる人」「人相、手相、家相が悪いのに運が上がる人」といった「例外」に、ずいぶん悩んだそうです。
しかし、ついに「万にひとつの誤りもなし」を見つけたといいます。
それは「お金の多少によって生活を変えないこと」だそうです。
上記の「例外」の場合、前者は「お金によって生活が派手になる人」で、後者は「お金があっても生活がマイペースな人」という事になります。
これは、私が見てきた「栄枯盛衰」からも間違いないと言えそうです。
もちろん、たまの贅沢はOKと思いますが、「運の法則」には「お金の多少によって生活を変えないこと」があるという事で、皆さんも心に留めておいていただけたらと思います。
さて今回、「プライベントバンカー」の一読をオススメするもう一つの理由が、本著の登場人物の一人が私の間接的な知り合いでもあるからです。
本著には複数の登場人物がいますが、その中の一人が私の間接的な知り合いになります。
そして、「プライベントバンカー」に登場しているその人物は、最近の相場について、こう言ったそうです。
「これまでにないくらいのインチキ相場になっている」
「これまでにないくらいのインチキ相場になっている」は、まさに私が最近のコラムで述べてきた事にも一致しますが、だからこそ、本著における「相場の世界はひどいんだよね」「あえて臆病に運用する」「男気のあるディーラーというのは結局、死ぬ」といった事が重要な意味を持つのです。
非情に重要な事ですので、再度述べます。
・相場の世界はひどい
・あえて臆病に運用する
・男気のあるディーラーというのは結局、死ぬ
つまり、相場に臨むにあたっては、まずはこれらを胸に刻む事が先で、その上での「戦略」「対策」であるべきだという事です。
現状に対する「戦略」「対策」については、最近のコラムでも色々と語ってきましたが、再度整理をしますと、以下のようなものがあります。
・高金利通貨で運用
・金や銀を買ってみる
・「週足」から「日足」トレンド重視へと切り替える
・「時間を味方につける」という発想を取り入れる
さて、その上で、冒頭で述べた「欧州系某投資銀行のレポート」を参考にしてみます。
これについては、今年2月のコラムでも触れた事がありますが、単なるレポートではなく、とてつもない金額をかけて相場分析がなされているレポートです。
私はご縁でこのレポートを受け取っているのですが、一般的に出回っているようなものではありません。
お伝えできる範囲で言いますと、直近の見通しは以下のようになっています。
・ユーロドルは「買い」: 2015年8月の高値1.1710ドルを目指す展開
・ユーロ円は「買い」 : 今月付けた高値130.75円を再度目指す展開
・直近では最強通貨が「ユーロ」、次が「ポンド、豪ドル、NZD、カナダドル、スイスフラン」、最弱通貨が「ドル、円」
ちなみに、上記の通貨の強弱については、本手法における週足や日足の「色」からも同様の事が読み取れます。
ただし、一筋縄ではいかないのが、ドル円に関しては本レポートで想定されていた範囲を超えての円高に現在なっています。
さらに、本レポートは様々なテクニカルを中心に分析されたものですが、現在「ユーロ」が最強である事は、ファンダメンタルズを考慮した場合ですと、本来はおかしいことなのです。
ギリシャやキプロスの銀行の不良債権比率は5割もありますし、スペインではバルセロナがあるカタルーニャ州が独立運動で揺れており、10月1日に投票を行うと発表しています。
そして、このような独立運動による影響を懸念して、カタルーニャ州からは最近5年間で1700もの企業が姿を消しています。
イタリア経済も深刻で、世界最古の大手銀行であるモンテパスキ銀行が経営難のために政府によって国有化されることになっています。
その上、先月のコラムでも指摘をしましたが、欧州は若年層の失業率の高さも相当深刻なレベルとなっています。
要するに、ファンダメンタルズがほとんど意味を成さなくなってきているのが最近の相場の特徴といえます。
前述のように、「相場の世界はひどい」であり、「これまでにないくらいのインチキ相場」といった印象です。
しかし私だけではなく、現在、世界中で多くの専門家が相場に対しての警鐘を鳴らしていますので、遠からず相場の大幅修正がある事でしょう。
そんな中で、大事な事は「大局観」になります。
投資家として、より広範な視点で現状を見つめるようにするのです。
そういう意味で、本コラムが皆さんにとって、お役に立てればと私は思っています。
相場の世界で生き残るコツは、「大局観を失わず」「慎重さを失わず」です。
今回の「プライベントバンカー」の話にしても、「欧州系某投資銀行のレポート」の話にしても、常に頭の片隅で意識をしながら、引き続き、取り組んでいただければと思っています。