先週は、予想を覆す米大統領選挙の結果となりました。
トランプ米大統領の誕生という事で、日経平均も一時1,000円の下落となり、パニック的な反応となりました。
しかし、その後は多くの専門家の予測に反して、世界的に株価が上がる「トランプ相場」の展開となっています。
きっかけは、トランプ氏のスピーチにありました。
過激な発言は一切なく、米大統領にふさわしいスピーチで、「二つに分断された米国が一緒になって、強いアメリカを作っていこう」「すべての国民の大統領になる」「大規模な減税や高速道路などのインフラを積極的に整備して、米国を良くしていく」といった内容であった事から、市場に安堵が広がり、一転して「トランプ相場」となった模様です。
一方で、全米各地ではトランプ次期大統領への抗議デモが広がっています。
富裕層の中には、「アメリカを出る」と言っている人もたくさんいるようです。
隣国であるカナダの移民局のホームページは、アクセスが多すぎてパンクしているといいます。
このような状況を踏まえて、今後いったい、相場の方はどうなるのでしょうか?
ゴールドマン・サックスは、トランプ大統領の誕生で、ドル高になるといいます。
そして、その事が、中国の元安を招くといいます。
しかし、ここで立ち止まって考えてみたいのですが、ドル高になり、元安になるという展開は、昨年末の展開と一緒です。
その結果どうなったかと言いますと、2016年波乱の幕開けとなった世界同時株安です。
中国株式市場では株価の急変を防ぐためのサーキットブレーカーが発動し、120円で始まったドル円相場は、今年6月には一時98円台をつけ、今でも106円台です。
そんな中、私が参考になると思っているのが、「ミスター円」の異名を取る榊原英資氏の見立てです。
榊原氏は元財務官で、旧大蔵省時代に、米欧と協調介入を手掛けた経験があり、海外でも「ミスター円」として知られています。
榊原氏は、まず何よりも、トランプ氏率いる新政権は「ドル安志向」と指摘しています。
トランプ氏は米大統領選を戦っていた時も、「日本の度重なる円安誘導のせいで、友達は高いキャタピラーではなく、コマツのトラクターを購入している」と発言していましたし、ドル安が望ましいと考えている事が分かります。
そんな榊原氏の見立ては1ドル=90円程度まで円高ドル安が進むというものです。
現在、トランプ相場でドル高、株高、米金利高のリスクオンとなっていますが、特に「金利が上がる事」と「トランプ氏の求めるドル安」は両立しません。
つまり、「トランプ氏の求めるドル安」とは逆の展開になっているのが現在であり、先々ドルの急落は十分起こり得るという事です。
さらに、今後、急激なドル安円高になったとして、為替介入の話題が出てきたとしても、「日本の意思だけでは為替介入はできず、米国が行き過ぎたドル安に危機感を持つ水準まで来て、ようやく介入できるものであり、それは1ドル90円程度である」というのが榊原氏の見立てです。
さらに、日本の日銀についても、「日銀の金融緩和は最終局面に入っている」という事で、この事を考えても円高要因という見立てです。
したがって、現在のような相場展開も長続きはせず、一時的な乱高下であると考えます。
皆さんも、これらを念頭に現在の相場を見つめてください。