今回は「イタリア」について言及したいと思います。
と言いますのも、来月4日に控えているイタリア国民投票が「ユーロの未来を左右する」と言われているためです。
国民投票の中身は「憲法改正の是非を問う」ものです。
もし、憲法改正となった場合、上院議会の議員定数が削減され、権限は縮小し、首相の権限が強化される事となります。
レンツィ首相は「決められない国会」からの脱却を目指しての憲法改正を望んでおり、否決された場合は辞任すると言っています。
「辞任」と言っているのも、憲法改正は事実上、首相に対する信任投票を意味するためでもあるからです。
ところが、現在の世論調査では、憲法改正反対派が優勢だと報じられています。
そして、憲法改正が否決され、レンツィ首相が辞任した場合、年明けの早い段階で総選挙が実施されるのではないかと見られています。
イタリアは現在、対GDPで132%という公的債務を抱えています。
失業率は11.4%で、若者に至っては半分近くが失業中であるといいます。
このような状況下で、「五つ星運動」をはじめとする野党は憲法改正に反対し、「ユーロ圏離脱」を唱えており、不満の高まっている国民は、そんな野党を支持しつつあるといいます。
したがって、12月4日の国民投票で憲法改正が否決された場合、イタリアの政治は極めて混沌とします。
さらに、イギリスに続き、イタリアのユーロ離脱までもが現実的になってきます。
そうなってくると、ユーロの暴落は避けられない展開となりそうです。
1ユーロ=1ドルのパリティーの可能性も指摘されています。
しかも、憲法改正が否決された場合、金融危機の可能性まで指摘されています。
イタリアには深刻な銀行債務問題があり、銀行株は今年に入って半分にまで下落しています。
そんな中、国民投票で憲法改正が否決され、イタリア政治が混沌とすれば、確実にイタリアの銀行にとっての打撃となります。
専門家の中には「今回の国民投票で憲法改正が否決された場合、イギリスのEU離脱(Brexit)どころの騒ぎではない」と言っている人もいます。
まさに、12月4日の国民投票は、冒頭で述べた「ユーロの未来を左右する」との事です。
さて、米国大統領選挙でトランプ氏が勝利し、以後円安の勢いが止まりません。
しかし、12月4日の国民投票で憲法改正が否決された場合、市場はイタリアのEU離脱を連想し、再度「円」が買われる展開もあり得ます。
勢いよく円安になった反動で、今度は勢いよく円高になるジェットコースターのような相場展開もあり得ると思います。
国民投票の結果が出るまで、特にイタリア関連のニュースには要注目です。