「石が浮かんで、木の葉が沈む」
以前のコラムでお伝えさせていただいた言葉です。
【相場の世界では、どう考えても上がるべきなのに下がる、下がるべきなのに上がる、といったような事が多々あります。
「理論的に相場が間違っている」と言いたくなるのももっともですし、大物投資家のジョージ・ソロス氏も「相場はしばしば間違える」と言っています。
しかし、ジョージ・ソロス氏は「相場はしばしば間違える、だからチャンスがある」とも言っています】とお伝えさせていただきました。
欧州の情勢を考えた時に、私は最近のユーロこそがまさに「石が浮かんで、木の葉が沈む」になっているように思います。
ファンダメンタルでは、どう考えても下がるべきですが、テクニカルで現在の水準を保っているといった印象です。
なぜユーロなのかと言いますと、今、世界の銀行で、金融リスクが高い銀行上位3行として、ドイツ銀行、HSBC、クレディスイスと名前が挙がっており、いずれも欧州の銀行だからです。
さらに、バークレイズ、RBS、ユニクレディ、ソシエテジェネラル、クレディアグリコルなどの銀行の名前も挙がっている状況ですが、これらいずれも欧州の銀行だからです。
イギリスがEUを離脱した事によるマイナスの影響というのも今後必ず出てくると思います。
フランスではオランド大統領の支持率が過去最低で、フランスの歴代大統領としても過去最低の支持率となっています。
グリーンスパン元FRB議長は、現在の欧州について「EUは分裂するだろう。すでに色々な地域でその徴候が見られるではないか」と語ったそうです。
そんな中で、個人的に気になる情報があります。
8月21日、ドイツの大手紙が、「ドイツ政府が国民に非常事態の際に公的支援が提供されるまでの間、10日分の食料と5日分の水を備蓄するように呼びかけた」と報じた事です。
このタイミングでドイツ政府が呼びかけを行った真意が何なのか、非常に気になるところです。
ドイツ政府が近い将来なんらかの危機が発生することを予想していて、それに対する準備なのではないかと考えられます。
ドイツ政府の真意として考えられそうなのが、日本でほとんど報道されていませんが、ウクライナ問題です。
昨年2月に「ミンスク合意」と言われる停戦合意に署名がなされ、いったんは落ち着いていた情勢ですが、再び銃撃戦が行われるなど、情勢が悪化しているようなのです。
欧州といえばNATO諸国でもあり、ウクライナ問題というのは、ロシアとNATO諸国との対立でもあるため、最悪の場合は戦争までを想定しての食料、水備蓄の呼びかけであったのではないかという事なのです。
しかも、ウクライナは財政が完全に行き詰っており、ウクライナが破綻すると最も被害、負担が大きくなるのが欧州なのです。
前述の欧州の銀行による貸付は完全に焦げ付く事となります。
このような事を考えていきますと、ファンダメンタルではユーロは下がるしかない状況と思われます。
現在の水準を保っているのは、あくまでテクニカルだと思われます。
そんな中、最近ではヘッジファンドが運用を控え、現金保有の比率を高めているといった情報があります。
あるヘッジファンドの創業者は、世界の株式相場について、「あと5~10%の上昇余地があるかわりに、40~60%の下値余地がある」と語っています。
私も同感です。
この予想が正しければ、今後の日経平均の上限は17000円台半ばから18000円台半ばという事になります。
逆に下限としては、7000円近辺から10000円近辺となります。
直近の日経平均が上記水準の価格であった時、過去を振り返りますと、ドル円は76円付近から121円台後半で推移していました。
一方で、「ユーロとドルはパリティになる」と、ゴールドマン・サックス等が予想しています。
パリティとは「1ユーロ=1ドル」の事です。
この予想も正しければ、今後のユーロ円もドル円と同様、76円付近から121円台後半というのが該当する水準となります。
したがって、今後、この「76円付近から121円台後半」というのが、ドル円、ユーロ円の中長期における目安となってくるのではないかと思います。
皆さんにおかれましても、今後この価格帯を意識して、突然の暴落等には十分注意しながら取り組んでいただければと思います。