原油相場について考察します。
原油相場について考えますと、今後円高になる可能性が高いだろうという結論なのですが、それは後程説明したいと思います。
さて、学校でも習ったと思いますが、OPEC(石油輸出国機構)という組織があります。
実は、現在このOPECの価格調整機能が崩れつつあります。
ご存知の方も多いと思いますが、アメリカで「シェール革命」が起こっています。
この重要さを分かっていない専門家もいるようなのですが、これは文字通り、本当に「革命」です。
なぜなら、世界最大の原油輸入国であったアメリカが輸出国に転じたからです。
この意味するところは、OPECからすると、今まで最重要顧客であったアメリカが商売上のライバルに変わったという事です。
イギリスの石油大手BPが「世界エネルギー統計2015」で示した原油生産量の国別順位では、なんとアメリカがサウジアラビアを抜いて1位となりました。
このインパクトは計りしれません。
そのため、OPECとしてはシェールオイルを潰さなければならないという判断になりました。
つまり、原油価格が下がっても「減産をしない」という選択をし、シェールオイルを採算割れに追い込むという戦略です。
しかし、これが大きな失敗となりつつあります。
アメリカは世界最大の原油輸入国から輸出国に転じたと前述しましたが、アメリカは国家戦略として「エネルギーは必ず安定的に確保する」という戦略を採用しているからです。
止まらない原油価格の値下がりによって、アメリカのシェールオイル会社の多くが採算割れで倒産していきましたが、別の会社が次々に引き継いで、生産量自体はほとんど減っていないのです。
そんな中で起こった大きな出来事がイランの経済制裁の解除です。
つまり、今後イランとの貿易に制限がなくなるという事を意味します。
という事は、市場における原油の供給は今後さらに増えていき、供給が増えるのであれば原油価格はさらに下がるという事になります。
OPECの加盟国の中にはサウジアラビアもあればイランもあります。
ところが、今年初めに「サウジアラビアとイランが国交断絶」と報じられたように、両国は現在、国交断絶状態です。
という事は、現在のOPECは正常な価格調整機能を有していないという事になります。
そして、原油産業はサウジアラビアもイランも国策となっています。
元々原価自体が安いという事もありますが、今後原油価格がさらに下がっても、国策であるからには耐えられるという事です。
つまり、世界全体の流れとしましては、原油の供給量は増える事はあっても減る事はない、という状況なのです。
したがって、投機的な売り買いで乱高下する事はあっても、需給を考えますと原油価格の今後は「下落」という判断になるのです。
シェール革命により、膨大な原油資源を手に入れたアメリカの次の一手は市場制覇になるはずですし、そうすれば価格引き下げ競争になるのは必至です。
では、原油価格が下がるとして、株価はどうなるかという事なのですが、原油価格と株価は高い相関関係にある事が知られています。
原油価格と日経平均も高い相関関係にあります。
この意味ですが、経済の減速は株価の減速や原油の需要減少に繋がるという事なのでしょう。
また、以前のウィークリーメールでもお伝えさせていただきましたが、「原油安で財政の逼迫したサウジアラビアによる投資資金引き揚げが進む」という影響で株が売られる展開もあります。
したがって、株価にとっては原油安が下落要因となりそうなのです。
さらに、ご存知のとおり、日経平均とドル円も高い相関関係にあります。
お時間ある方は、日経平均とドル円のチャートを一度見比べてみてください。
非常によく連動している事が確認できると思います。
つまり、原油価格について考えますと、どうしても「下落」という判断になりますし、原油価格が下がるのであれば、株価が下がりドル円も下がる、つまり円高に推移していくという判断になります。
また、ドル円が下がるのであれば、他のクロス円も同様に下がりやすい傾向にあります。
こちらも高い相関関係にある事が知られています。
という事で、原油価格は下がりそうなのですが、ある意味でチャンスでもあります。
それは、今後は「円高」で稼ぐチャンスではないかと思うからです。
昨今、非常に不安定な世の中ですが、そんな中でもしっかりチャンスを見つけていきたいものです。
私は、為替においては円高狙いが良いだろうと思っています。