日銀が金融政策決定会合でマイナス金利を導入したことを受けて、日経平均も為替も激しい乱高下を繰り返しました。
日経平均は600円近い上昇から下げに転じ270円超安となったかと思うと、今度は急上昇しました。
結局、476.85円高の17518.30円で終了しました。
ドル円は朝方118円台だったのが121円台を超え、今度は急落し、119円台前半まで下落しました。
その後は、また121円台へと上昇です。
まるで、ジェットコースターのような値動きでした。
最近は、「相場が投機のおもちゃにされていて、分析も何もあったものではない」との声がよく聞かれます。
要するに値動きが滅茶苦茶なわけですが、要因としましては、今の市場が一昔前とは違い、人手を介さないコンピュータシステムが市場をかく乱しているからだと言われています。
さて、今回は日銀がマイナス金利を導入したわけですが、これはどういう事なのかを簡単に説明していきたいと思います。
日銀がこれまでにもやってきた金融緩和ですが、金融緩和とは一言で言いますと、通貨供給量を増やす事です。
通貨供給量を増やして景気を底上げしようという事です。
黒田日銀総裁と金融緩和の両方を指して、「黒田バズーカ」と呼ばれ、2013年以降、2年で140兆円の緩和を行おうという事で進んできました。
これによって、この2年間は株価も上がり、為替も大きく円安に振れてきたのですが、国民の生活実感としましては、「景気が良くなった」とは誰も思っていないような状況です。
なぜなのでしょうか?
それは、金融緩和で通貨供給量を増やしても、銀行にお金が渡るだけで国民にお金が渡るわけではないからです。
金融緩和とは通貨供給量を増やす事ですが、同時に日本の借金を増やす行為でもあるのです。
その一方で、「財政再建が必要」と言って、消費税を上げるという話になっています。
つまり、「増税をしなければならないほど財政が悪い」と言いつつ、日本全体の借金を増やす事を政府は行っているわけです。
こういった論理的矛盾の中、金融緩和といっても国民にお金を渡しているわけではなく、日本全体の借金を増やしつつ消費税を今後さらに引き上げるという話ですから、国民の生活実感としての「景気が良くなった」にならないのは当然の展開なのです。
このように、金融緩和で銀行にお金を渡しても、私達国民にお金が流れてこない状態を「豚積み」と言います。
銀行の資金は国民に渡らずに国債を買うなどして滞留し、日銀の当座預金は積み上がっていく、という状態を指します。
こうなっている元凶はBIS(国際決済銀行)によるBIS(ビス)規制にあるのですが、有効な手を打たない日本政府の責任も非常に大きいのです。
したがって、政府は「本気で景気を良くするつもりなんてない」という事で、国民は怒ってもいい状況なのです。
国民の懐が潤わない事には、景気は良くなりようがないからです。
ですので、景気を良くするには、「銀行はどんどん融資をしなければペナルティー」という仕組みにしていかなければならない、と多くの専門家にこれまで指摘されていました。
そして実は、「融資をしなければペナルティー」に繋がるかもしれないのが、今回のマイナス金利なのです。
銀行が日銀の当座預金に資金を積み上げていく状態、つまり「豚積み」に対して0.1%のマイナス金利が適用される事になったわけです。
銀行は融資をせずに日銀の当座預金に資金を積み上げていくと、新たに積み上げる資金に関しては0.1%のマイナス金利で目減りしていくわけです。
ようやく国民に資金が流れていくかもしれない仕組みになったわけです。
そういう意味では、今回の「マイナス金利」導入は非常にインパクトのあるものでした。
マイナス金利導入の発表後は、前述の「相場が投機のおもちゃにされていて、分析も何もあったものではない」という値動きになりましたが、その後落ち着いてくると、日経平均もドル円も大きく上昇しました。
マイナス金利は市場に好感されたわけです。
これによって、日本は新たなステージに突入した可能性があります。
景気が良くなる事を切に願いたいと思います。
最後に、「相場が投機のおもちゃにされていて、分析も何もあったものではない」についてですが、個人投資家としてできる対策は「とてもとても用心深く、とてもとても慎重に」という事に尽きると思います。
著名投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイスでもあります。
常に相場が乱高下しているわけではありませんが、今後も何が起こってもおかしくないという事を念頭に、リスク管理を怠らずに取り組むべきだと思います。